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◆桃のパフェ

 薄い桃のチュイルをまとった可憐な姿で登場するのは、旬の桃を使った「桃のパフェ」です。

 「僕のなかでは、桃のデザートコースをひとつにまとめたようなパフェ。上から下へと食べ進めるにつれて、移り変わる味わいを楽しんでいただけるかと思います」と、田中丸さん。

 提供直前にフレッシュなミントの葉をグラス全体にふわりとなすりつけ、まとわせたさわやかな香りが食欲をそそります。

 まず桃そのもののおいしさを感じてほしいと、トップにはフレッシュな桃(食べやすいよう、隠し包丁が入れられているという細やかな心配り!)をたっぷりと。桃とグレープフルーツ、ミントのソルベと混じり合い、すっきり、清涼感あふれる桃の魅力を満喫できます。

 その下には、さわやかな青ユズで和えた角切りの桃と、ヒューガルテン(ベルギーのホワイトビール)とミントのアイスクリームが。「桃のニュアンスを持つヒューガルテンにフレッシュな桃のピュレ、フレッシュミントを合わせてアイスクリームにしました。青ユズの桃と一緒に食べると、非常に相性がいいと思います」と、田中丸さんは語ります。

 そして、ジャスミンとハチミツのクレーム・シャンティイがまろやかさをプラス。ジャスミンティーのオリエンタルな花の香りと、ハチミツの個性的な風味と甘みが、桃のみずみずしさをやさしく包み、おだやかに調和します。

 そこから一転、力強い酸味と果実味、赤い色で鮮やかなアクセントを添えるのが、プラムとそのソースです。「桃の系統ではありつつ、異なる酸味としてプラムを合わせました。フレッシュなプラムをつぶして甘さだけ調え、角切りにしたプラムに和えています」と、田中丸さん。

 さらなるサプライズは、グラスからも透けて見える一粒のティムールペッパー(ネパールの山椒の一種)です。カリッと噛むと、しびれるような刺激と柑橘を思わせるさわやかな香りが弾けて、目が覚めるほど鮮烈! 「桃は淡い味わいなので、アクセントとしてティムールペパッパーを加えました。和食にわさびを添えるイメージですかね。香りが桃にも合うと思います」。

 そしてフィナーレは、シャンパンのジュレと桃のスパイスコンポート。ジュレにも、レコルタンマニピュラン(自社で栽培醸造を行なう小規模生産者)のシャンパンが使われ、高貴な香りが広がります。コンポートは八角、シナモンを加え、インパクトのある味わいに。めくるめく現れるさまざまな桃の表情を、最後まで楽しめます。

 「桃のパフェ」とのペアリングドリンクは、「断然シャンパンです。黄金色に輝く高貴な飲み物で、ブドウの力強さにあふれ、桃のトロッと甘い感じに微発砲のシャンパンがよく合います」と、田中丸さん。こちらも、レコルタン・マニピュランのシャンパンが提供されます。

2024.08.10(土)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵