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 美しく華やかで、おいしいものが彩り豊かに閉じこめられたパフェ。その人気は止まるところを知らず、美しさも味わいも日々磨きがかけられ、進化しています。

 グラスの中で醸し出されるハーモニーは、まさに“parfait”(フランス語で「完璧」の意味)! このシリーズでは、今注目の心躍る魅力的なパフェをご紹介します。

 今回は、鎌倉の中心、若宮大路にあるお店をご紹介します。


若宮大路に面したパティスリーで軽やかなパフェを

 鎌倉の鶴岡八幡宮に向かう若宮大路沿いに建ち、青いファサードがひときわ目を引くのは、2022年10月にリニューアルオープンした「la boutique de yukinoshita kamakura(ラ・ブティック・ドゥ・ユキノシタ・カマクラ)」です。

 店内に足を踏み入れると、ショーケースには繊細な美しさと味わいのケーキが宝石のように華やかに並び、ラグジュアリー感いっぱい。訪れる人の目と舌を楽しませています。

 シェフ・パティシエを務めるのは、東京・練馬「パティスリーキャロリーヌ」や東京・大山の「マテリエル」でスーシェフを務めた、佐々木元さん。国内外のコンクールで優勝や準優勝を飾るなど、輝かしい経歴を持つ注目の若手パティシエのひとりです。

 12席あるサロンではケーキももちろん味わえますが、4~9月のお楽しみはなんといっても、旬のフルーツを主役にした「ユキノシタパフェ」。常時1品用意され、2カ月ほどで内容が入れ替わります。

 「フルーツ頼みになると、誰がつくっても同じになってしまうので、組み合わせやバランスで個性を出すように心がけています」と、佐々木さん。

 香りや口どけ、食感の変化を大切にし、食後感はすっきりと。「バターやクリームといった乳脂肪はできるだけ入れないようにしています。そのほうが素材の香りも生かされますし、最後まで食べても重たくならないと思うから。パフェでお腹がいっぱいになってしまうのは嫌なので、素材の風味はしっかり感じさせつつ、ジュレやグラニテを組み込んで潤いたっぷりに、さらりと食べ切れるパフェを目指しています」。

◆ユキノシタパフェ ~苺と薔薇とピスタチオ~

 2024年4~5月に提供され、華やかな香りで人気を集めていたのが、「ユキノシタパフェ ~苺と薔薇とピスタチオ~」です。

 トップを飾るのは、クリアに輝くバラと赤ワインのジュレを注ぎ入れ、「ルージュ・ロワイヤル」という名のバラの花びらをあしらったフランボワーズのチュイル。口どけとともに、バラの優美な香りがふわりと押し寄せます。

 その下にはフランボワーズとバラのソース、ライチとバラのグラニテ、ピスタチオのエスプーマ(泡状ムース)が層を成し、果実味とともに華やかな香りが増幅。フランボワーズ風味のチョコレートをパリッと割れば、フレッシュなイチゴが現れ、みずみずしいハーモニーを醸し出します。

 そして、ピスタチオのラングドシャの下には、甘酸っぱさとエレガントな香りが混じり合うイチゴとバラとフランボワーズのソルベが。カリカリとしたピスタチオのクリスタリゼ(糖衣がけ)と、香り高い不知火のコンフィがアクセントを添え、赤ワインとバラのジュレが再び現れて、すっきり、鮮やかなフィナーレへ。

 「グラニテやジュレ、ソルベには、奥出雲薔薇園の『さ姫』を使用しています。香りがエレガントで、煮出した色合いもきれいで、すごく好き」と、佐々木さん。高貴な香りのハーモニーに、うっとり、夢見心地になってしまうひと品です。

2024.06.08(土)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵