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その瞬間にその場でしか味わえない、作りたてのおいしさを味わうというデザートの醍醐味。その魅力を存分に堪能できる、デザートコースを提供するお店が増えています。
カウンターに腰かけ、シェフの言葉に耳を傾けながら目の前で仕上げられるひと皿、ひと皿に胸を高鳴らせ、香りや温度、音を感じ、味わいを楽しむひとときは、まさに至福の時間。
とっておきのデザートコースを味わいに、いざ!
明日からの元気をくれるデザートコース
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2022年、恵比寿に誕生した「As(アス)」は、ホテルやパティスリーで腕を磨き、さまざまなイベントで提供するパフェも人気を集める、青木繁さんによるデザート専門店。
「カウンターで提供されるデザート店というと、ちょっと緊張するかもしれませんが、ここでは肩肘張らず、気楽にデザートを楽しんでもらいたい」と、青木さん。店名の「As」には、自身の名前のイニシャルとともに、「ここでデザートを食べて明日も頑張ろうとおもってもらえたら」という、願いがこめられていると語ります。
特徴的なのは、旬の食材を主役としながらも、卵や小麦粉、クリームといったパティシエがお菓子をつくるのに欠かせない素材も使い、パティシエの技術も生かされたデザートであるということ。
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「『お菓子屋さんがつくるアシェット・デセール(皿盛リデザート)』が、僕の目指すところです。そう考えるきっかけになったのは、修業時代に先輩から言われた、『一流の食材を使って一流の味をつくることは、難しくない。でも、ありふれた食材で一流の味を作れたら、その技術は本物だ』という言葉。パティシエとしての経験値があってこそ、手にした食材をデザートとしてよりおいしく表現できると思うんです」
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さらに、学生時代に料理を学んだ経験や、レストランなどで出合った素材使いや調理法も加え、奥行きある味わいを表現するのが青木さんのデザートの大きな魅力。繊細かつ豊かな感性が光ります。
2024年5月のデザートコースをご紹介しましょう。
◆マンゴー・人参
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コースのスタートは、スープから。千葉県産のニンジンを使ったシャーベットに合わせたのは、クミンシードをほんのり香らせたサクサクのクランブル。
その上から、宮﨑産マンゴーをそのままピュレにしたソースが、目の前でたっぷり注ぎ入れられます。
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「ニンジンのサラダをイメージして、クミンシードをフライパンで炒ってからクランブルに加えました。ニンジンのシャーベットには河内晩柑の実を少し入れて、酸味と渋みですっきりした後口に仕上げています」と、青木さん。
「マンゴーはそのままで十分甘いので、砂糖も加えずソースにしました。甘いのはそんなに好きではないので、必要以上に甘くしたくない。素材そのものがおいしければ、それほど甘さは要らないというのが僕の考えです」。ピュアなおいしさとみずみずしさが、体にやさしくしみ渡っていきます。
2024.05.28(火)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵