ミュージカル俳優としても活躍し、映画『建築学概論』、『EXIT』やドラマ『賢い医師生活』シリーズなどでの演技でも評価の高いチョ・ジョンソク。

 彼が、勝つためには手段を択ばない弁護士を演じて新境地を見せた映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』が8月22日に公開となる。本作は、軍事クーデターで政権を掌握し、独裁者と批判されるほど強大な権勢を振るったパク・チョンヒ大統領暗殺事件の裁判と、その後に発生する軍事クーデターに巻き込まれた3人の男を、一部フィクションを交えて史実に基づき描いている。

 パク・チョンヒ大統領暗殺を描いた『KCIA 南山の部長たち』とその後の軍事クーデターを描いた『ソウルの春』をつなぐ映画に挑戦した彼に、新たな役を演じた心境や、故イ・ソンギュンとの共演の思い出について聞いた。


父の若かりし頃の時代に生きているような感覚

――『大統領暗殺裁判 16日間の真実』でのチョ・ジョンソクさんが演じたチョン・インフという弁護士は、いつもとは違う役柄のように思いましたが、ご自身はどう感じられましたか?

 俳優には、自分の中にどんな引き出しがあるのかを絶えず探しながら探検をしているというような側面があると思うんです。この役柄をいただいた時には、今までとは違う役柄だからこそ好奇心も生まれましたし、同時にチャレンジしたいと思いました。また、この作品が持つ「重み」が私の心にとても響いたんです。

――今回の作品に関してはその「探検している」ような感覚を、どのような部分で感じられましたか?

 私は歴史ものの作品がとても好きなんです。歴史ものって、ずっしりしていますよね。自分自身も、そんな重みのあるストーリーの中に入ってみたいし、その時代の流れの中に生きているような感覚になりたいと思っていました。

 今回の作品に関しては、自分が生きたことのない時代にタイムマシーンに乗って行った探検家のような気分でもありました。それに、この映画に描かれた時代って、自分の父親世代が生きていた時代なんですよね。撮影現場のセットや空間の中にいると、そんな風に父の若かりし頃の時代に、自分が本当に生きているような感覚を覚えたんですね。共演者の方たちとも、そんなことをよく話していました。

2025.08.22(金)
文=西森路代