原題『幸せの国』というタイトルへの解釈

――俳優さんに話を聞くと、本番の直前まで楽しく話していたかと思ったら、本番になると突然豹変して役に入り込むという方もいるそうですし、反対に役に入る前から、ずっと緊張感を持っている方もいると聞きます。チョ・ジョンソクさんや他の皆さんはどちらでしたか?

 私の場合はまずはその両方がありました。場面に応じて、その両方が混在している感じだったと思います。普段から俳優って、その人物について、ずっと研究したり、何か新しい表現がないかと試みたりしてるんですね。それはプレイヤーとしてのとても重要な資質だという風に考えています。

 他愛のない日常会話をして笑いあっていても、カメラが回ったらがらりと変わるというアプローチもあります。そうすることによっていいものが生まれることもあります。反対に、緊張感を維持した状態でカメラの前に立った時に、より良いものが生まれる場合もあります。それを時と場合に応じて、柔軟に対処している方だと僕は思います。ユ・ジェミョンさんもイ・ソンギュンさんも僕と似通ったタイプでのアプローチだなという風に思いました。

 1つ補足させていただきますと本作においてはユ・ジェミョンさんもイ・ソンギュンさんも、終始、緊張感をずっと維持しようとされていたときが多かったという風に感じました。やはり役柄が役柄だけにそうだったんだと思います。

――日本では『大統領暗殺裁判 16日間の真実』というタイトルで公開ですが、韓国では『幸せの国』というタイトルだったと聞きました。『幸せの国』というのは解釈が必要なタイトルだと思うんですけど、チョ・ジョンソクさんはどのようにこう解釈されていましたか?

 正直言いますと、『幸せの国』というタイトルに対して、特別な意味をあまり感じていなかったんですね。でも今ご質問いただいて考えてみると、二重的な意味を持っていたのではないかと思いました。ある意味、私たちの願いのような、言い換えれば、私たちが望む形、望む世の中が来てほしいということをこの作品に込めたんではないかという風に思っています。

 なぜならば私が最初にシナリオを読んだ時に響いてきたのは、命の尊厳に対する強い思いだったんですね。だから、この尊厳に対する思いや希望というものが、タイトルにも込められているんじゃないかと思います。

チョ・ジョンソク

1980年12月26日生まれ。2012年、『建築学概論』でスクリーンデビュー。以降、ミュージカル、ドラマ、映画と幅広く活躍中。

大統領暗殺裁判 16日間の真実

8月22日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開

【STORY】
厄介な事件の裁判を多く担当する弁護士会のエースである主人公チョン・インフ(チョ・ジョンソク)は、大統領暗殺事件に巻き込まれた中央部情報(KCIA)部長の随行秘書官であるパク・テジュ(イ・ソンギュン)の弁護を引き受ける。軍人であるがためにただ一人軍法裁判にかけられ、たった一度の判決で刑が確定する彼のために、公正な裁判を求めて戦うチョン・インフだったが、のちに軍事反乱を起こす巨大権力の中心である合同捜査団長チョン・サンドゥ(ユ・ジェミョン)によって裁判は不正に操られていたー。

キャスト:チョ・ジョンソク(「賢い医師生活」)、イ・ソンギュン(『パラサイト 半地下の家族』)、ユ・ジェミョン(『劇映画 孤独のグルメ』、「梨泰院クラス」)
監督・脚本:チュ・チャンミン(『王になった男』)
2024/韓国/124分/カラー/スコープ/5.1ch/原題:행복의 나라/字幕翻訳:福留友子/配給:ショウゲート
© 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.
公式X:@showgate_asia #大統領暗殺裁判
公式サイト:https://daitoryoansatsusaiban-movie.jp/

2025.08.22(金)
文=西森路代