戒厳令が出た夜、韓国の人々はどんな風に過ごしていたのだろう。2年ぶりの韓国特集は、いまの韓国をもっと知りたいという思いとともにはじまりました。あの夜のことを自宅で語ってくれたアーティストのイ・ランさん。日常を取り戻した街で出会った、伝統とモダンが溶け合う工芸品に食や、ファッション。韓国の新しい風にのって、いま旅に出かけませんか。
CREA 2025年春号
『韓国のすべてが知りたくて。』
定価980円
CREA WEBでは、「CREA」2025年春号のコンテンツの一部を大公開します!
“春の日差しのような人”

開口一番、透き通った大きな瞳をまっすぐこちらに向けながら、「こんな質問を受けたのは初めてです」と告げられドキリとした。「最新作のオファーを受け取ったのはいつか」というシンプルな質問が“初めて”とは――。真意がわからずに戸惑っていると、笑顔を浮かべて「こんなに具体的なところまで聞いていただけることがあまりないので、最初の質問がこれでちょっと嬉しかったんです」と言う。瞬間、現場全体の緊張がふっとゆるみ、彼女こそが「春の日差しのような人」だと感じられた。
韓国ドラマの歴史を振り返っても『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は特別な作品だ。発達障害を描くというタブーに切り込み、自閉スペクトラム症に向けられた無数の偏見を塗り替え、たった一つの作品で、この世界を少し優しい場所に変えてしまった。その制作陣に「主人公は彼女以外考えられない」と言わしめたのが、子役からキャリアを重ね、当時すでに演技派として名を馳せていたパク・ウンビン。彼女が綿密なリサーチと温かい眼差しでキャラクターを描き出し、放送が始まるや否や、世界中をウ・ヨンウの味方にしてしまったことは記憶に新しい。
2025.06.07(土)
Photographs=Kim Sinae
Styling=Kim Seha
Hair=Kang Dohee(PRANCE)
Make-up=Kim Yun-young(PRANCE)
CREA 2025年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。