1904年、コペンハーゲンで誕生したGeorg Jensen(ジョージ ジェンセン)。金細工職人でもあり彫刻家でもあった創業者の美意識を受け継ぎながら、シルバーを軸に機能性と芸術性を融合させてきた。120年以上にわたり北欧デザインを代表する存在であり続ける根底には、クラフツマンシップへの深い敬意が流れている。
そんなジョージ ジェンセンが2026年5月、クリエイティブディレクター、Paula Gerbase(パウラ・ジェルバーゼ) による初のジュエリーコレクション「Weft by Georg Jensen」を発表。それを記念し、ロンドンにてアート展「Weft」を開催した。パウラのディレクションのもと企画された本展では、6名のアーティストたちが制作プロセスや素材、構造と向き合いながら、伝統的な技法を現代的に再解釈する試みを展開した。
テーマである“Weft”とは、織物における「横糸」を意味する。その言葉通り、新ジュエリーコレクションは、スターリングシルバーのワイヤーを織り込むように構築された、有機的なフォルムが特徴だ。鎖状に組み上げたシルバーの内部にさらにチェーンを通すことで、繊細でありながら強さも宿す。構造そのものがコンセプトとなっており、アート展のテーマと繋がっている。
本展には、ロンドンを拠点に活動する日本人アーティスト、Maiko Tsutsumi も参加。道端で拾った木や石に漆を施し、“ただの素材”に新たな存在感を与えるという作品だ。異なる素材が交差することで生まれる感覚や関係性は、「Weft」とも静かに共鳴していた。
パウラ自身も日本のテキスタイルや籠編み、陶芸などにも以前から関心を寄せてきたが、特に惹かれているのが、日本の“間”という概念。余白や静けさを尊重する感覚、最小限の表現で豊かな感情を宿す日本的な美意識に影響を受けているそう。
クラフトマンシップを大切にする背景には、パウラ自身のキャリアにも関係している。ブラジル生まれ、スイス育ち。ロンドンの名門セントラル・セント・マーチンズ卒業後、サヴィル・ロウでテーラリングを学び、英国王室御用達の老舗「キルガー」でヘッドデザイナーを務めた。その後、「ジョン・ロブ」 のアートディレクター、自身のブランド「1205」「Gerbase」を手がけるなど、ファッションとクラフトの双方を横断してきた人物だ。
「新作ジュエリーの制作において意識したのは“テキスタイル”でした。織物の構造には、内部で張力が変化し続けるような感覚があり、それがとてもエモーショナルなんです」。そう彼女が語るように、「Weft by Georg Jensen」のジュエリーには、シルバーワイヤーならではのしなやかさが生かされている。まるで布のように身体に寄り添い、動きに合わせて表情を変えていく。さらに今回のコレクションの鍵となるのは、“構造の美しさ”。表も裏もなく、ネックレスの留め具さえデザインの一部として成立している。シルバーの線が織りなす繊細な造形には、クラフトへの敬意とパウラの哲学が静かに息づいていた。
アート展「Weft」は、新作ジュエリーの発表記念にとどまらず、“人が手で作る”という行為そのものに光を当てる試みでもあった。また、同メゾンは参加アーティストへの謝礼支給に加え、2027年より「Georg Jensen Contemporary Prize」を創設予定であることも発表。クラフトの価値を伝え、現代の作り手たちを支える、アートと手仕事をつなぐ“横糸”のような存在になる。ジョージ ジェンセンのそんな新たな意思が込められていた。
GEORG JENSEN
Edit & Text=Mami Sekiya、Mai Ogawa
