CREA 2025春号「韓国のすべてが知りたくて。」では、「韓国カルチャーの最前線 7人の証言」として現地取材を敢行。ドラマ、映画、ウェブトゥーン、文学、K-POPと各ジャンルにおけるキーパーソンたちの独占インタビューを10ページにわたり特集しています。 「CREA」2025年春号より、ヘアスタイリストのパク・ネジュさんにお話を伺いました。
CREA 2025年春号
『韓国のすべてが知りたくて。』
定価980円
ポップアイコンをヘアスタイルでつくる

洗練されたビジュアルで、世界のファッションをリードする存在になりつつあるK-POPアーティストたち。そのビジュアルを創り出し、いまやヘアトレンドの最前線に立つのが、ヘアスタイリストのパク・ネジュさんだ。
2018年、ソウルの清潭洞にメイクアップアーティストのウォン・ジョンヨさんと共同でサロン「Bit & Boot」をオープン。多くのアイコニックなヘアスタイルが誕生したその場所で、パク・ネジュ院長が追求するスタイリングの美学に迫った。
――K-POPに携わるようになったのはいつでしょうか?
初めてK-POPアーティストを担当したのは、東方神起がふたり体制になって初のアルバム『Keep Your Head Down』(2011年)をリリースしたときでした。そこからSMエンターテインメントのアーティストを担当するようになり、EXOはデビュー前から現在に至るまで担当しています。ほかにBTSやL E SSERAFIMも手がけてきました。
ターニングポイントになったのは、EXOの2ndミニアルバム『Overdose』(2014年)のときです。それ以前は、アイドルのヘアスタイルはキャラクターのように型にはまったものが多かったのですが、私はそれを少し窮屈にも感じていて、より自由なスタイルを試したいと考えていました。

そこで『Overdose』では、KAIのヘアスタイルを真っ白にブリーチし、思い切って前髪を上げて額を出したのです。すると「このヘアスタイルは誰が担当したのか」と話題になり、以降、多くのオファーが舞い込むようになりました。

ちょうどアーティストのビジュアルをビジュアルチームとともにつくり上げていくシステムが確立されつつあった時期でもありました。
――K-POPにおけるヘアスタイルに対する観念そのものを変えたのですね。アーティストにとってヘアスタイルはどのような役割を果たしているのでしょうか?
ヘアスタイルはアーティストのイメージを表現する上で、ある意味最も重要な要素の一つだと考えています。K-POPアーティストの場合、俳優や他のセレブリティとは異なり、アルバムがリリースされるたびに新しいビジュアルを打ち出す必要があります。そして何より、ステージ上では全力でパフォーマンスをすることが求められます。ヘアとメイクが自分に似合っていないと、自信を持ってステージに立つことはできません。
ですから、私はヘアスタイルやカラーがその人にどれだけ似合うかを考えるのはもちろんですが、性格や個性に合っているかも重視します。スタイルのイメージを視覚的に見せたり、会話を重ねたりしながら、アーティスト本人に納得してもらい、自信を持ってもらうことを大切にしています。

LE SSERAFIMがデビューする際は、メンバーのCHAEWONに黒髪のボブスタイルを提案しました。まず、ビジュアルディレクターに提案し、ウィッグを使って事前にビジュアルを確認しながら慎重に進めました。髪を切ってしまったら元に戻せませんから。

このヘアスタイルによって、LE SSERAFIMにおけるCHAEWONのキャラクターが多くの人に伝わったのではないでしょうか。
――ドキュメンタリー映画『JUNG KOOK:I AM STILL』には、兵役のために髪を刈り、涙するネジュ院長をJUNG KOOKさんが抱きしめるシーンが収められています。おふたりの強い信頼と深い絆を感じました。
JUNG KOOKの髪を刈ったのは、ロサンゼルスでの最後のスケジュールが終わった後のホテルの中でした。韓国の男性は、軍隊に行く2~3日前に髪を切ることが一般的なのですが、突然JUNG KOOKが「スケジュールが終わったので、いま切りたい」と言ったんです。私も、まさかその場で切るとは思っていませんでした。

BTSのメンバーとはデビュー前から一緒に活動し、アルバム制作のために海外へ同行し、一緒に話をしたり食事をしたりする中で、アーティストというよりも家族であり弟のような存在になっていましたから、思わず感極まったことを覚えています。
2025.05.13(火)
文=CREA編集部
写真=平松市聖
CREA 2025年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。