
「ミシュラン」や「ルレ・エ・シャトー」など、美食やもてなしの世界との絆が深いスイスの名門時計ブランド「ブランパン」。
日本唯一のブランドフレンドであり、大阪を代表する料亭「柏屋」の主人・松尾英明さんと女将の克子さんに日本料理をはじめとするオートキュイジーヌと高級時計作りに通底する崇高なる精神を伺った。
頂点を目指すものづくりに息づく国と分野を超えた価値観

柏屋を代表するメニューに、“かさね”がある。平安装束の「かさねの色目」に着想を得たデザート。数種類の餡の色と風味で表した正方形が、移ろう季節を伝える。
英明さんが具象表現から抜け出し、抽象的な表現の料理を模索する過程で生まれた技の極みだ。



このように柏屋の料理一皿一皿から、時計製造と美食の世界の共通項を見出すことができる。素材を吟味する目、自然への敬意、伝統を受け継ぎながら革新を続ける情熱。とりわけ卓越した職人技は欠かせない要素である。
ブランパンでいえば、1735年創業で現存する世界最古のマニュファクチュールという歴史。柏屋でいえば、15年連続のミシュラン3ツ星獲得やルレ・エ・シャトーへの加盟。昨年、英明さんが厚生労働大臣から「現代の名工」として表彰された功績が裏づける。

「極小のパーツまで職人が手作りし、見えない部分にまで丁寧に技を施す。スイスにあるブランパンの工房を訪れた際、こういった仕事こそ時計の存在感を特別にしているところに、日本料理と通じるものを感じました。
一朝一夕では体得できない、長い年月の積み重ねが結実している点も、同じ“作り手”として共鳴します」と英明さんは語る。さらに、「挑戦しながらも、本質を見失わないものこそ文化として命を得る点にも共感します」と続ける。

また、女将の克子さんはホスピタリティの視点から、こんな共通項を見出した。
「私たちは、吟味した料理、旬の美しい花やしつらいでお客さまを迎え、最も良いタイミングで楽しんでいただけるよう、皆が力を尽くして準備をします。この一連の流れは、ケースに心を込めて手作業でパーツを重ねる時計作りと似ていると感じています」


ブランパン ブティック 銀座
電話番号 03-6254-7233

Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2025.06.30(月)
Edit&Text=Rica Ogura
Photo=Kunihiro Fukumori,Natali Popova
CREA Traveller 2025年夏号
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