誕生から20年目の夏、雲海テラスがさらに進化

◆星野リゾート トマム[北海道・占冠村]

 「お客様にもこの眺めをぜひ見せたい」

 とあるスタッフのそのひと言から始まった星野リゾート トマムの「雲海テラス」。今年、その誕生から20年のアニバーサリーイヤーを迎え、その累計来場者数は約170万人にものぼります。

 雲海という北海道の新たな魅力を「発明」したこのリゾートでは、今夏も先駆者ならではの楽しいおもてなしでゲストを歓迎します。

 今や年間約15万人もの人々がその圧倒的な光景を求めて訪れる星野リゾート トマムの「雲海テラス」。その始まりは、地元出身のゴンドラ整備員の何気ないひと言だったのです。

 今から20年ほど前のとある日、スタッフは頭を悩ませていました。冬とは対照的に閑散としてしまう夏、どうしたらお客様に来てもらえるだろうか。

 そんなときに発せられた「お客様にこの眺めを見せたい」の言葉。あまりにも見慣れすぎた日常の風景である雲海。それが果たして夏の魅力になりうるのだろうか。

 「私、当初は大反対でした(笑)」と語るのは2代目雲海仙人の鈴木和仁さん。早朝からの仕事になるし、そもそも見に来る人なんているはずない……。

 2005年夏、ゴンドラ山頂駅の脇に設えられた簡易な早朝カフェは「山のテラス」と名付けられ、初年度に訪れたのはわずか900人ほど。だが、その奇跡の光景に感激するお客様の姿を見て、「これはいける」と確信したといいます。

 翌年には「雲海テラス」と名前を改め、サービスを充実。2007年には、なんと約1万7000人が来場するまでに。そこから進化は加速していきます。

 雲海の発生確率は約4割。そこで発生確率を伝える「雲海予報」を編み出したほか、北海道大学との連携により雲海発生のメカニズムも探究。太平洋産雲海、トマム産雲海など3つのパターンがあることを突き止めました。

 もちろん、山上でいかに楽しんでもらうかにも知恵を絞りました。絶景を眺める「Cloud Bar(クラウドバー)」、雲上の散策気分を味わえる「Cloud Walk(クラウドウォーク)」をはじめ、これまでにない斬新なヒット企画を次々に生み出したのです。

 そして20周年を迎えた今年。雲海テラスの魅力はさらに深化します。

 今夏には7つめとなる絶景スポット「Cloud Round(クラウドラウンド)」が完成、空中に浮かぶ半透明のベンチに座って絶景を満喫できるようになりました。

 また、リゾナーレトマムでは特典が満載の「雲スイートルーム」でのアニバーサリー宿泊プランなども用意します。

「私たちにとっての日常のなかに、お客様にとっての非日常はまだあるはず。それを見つけていきたい」(雲海仙人·鈴木さん)。

 その情熱こそがゲストに感動をもたらすのです。

2025.06.25(水)
文=矢野詔次郎
写真=榎本麻美

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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