又吉直樹さんが書き下ろした詠み句に、たなかみさきさんが絵を描き下ろした書籍『失恋カルタ』が話題となっています。
失恋の喪失感や孤独感を掬い取った繊細な句と、かわいらしくて優しくもどこかちょっぴり切ない絵が魅力的なこのカルタは、当初、又吉さんの朗読会のグッズとして制作。そこから話題となって、新装した『失恋カルタ 藤色版』、そして書籍が発売されることになりました。
今回は又吉さんとたなかさんに、カルタと書籍の制作について、さらにご自身の失恋談やモテについて語っていただきました。
》後篇「『俺の痛覚はおかしくなってたんやな』後輩の指摘にゾッとし…又吉直樹が度重なる失恋で学んだ『モテる』ことの“残酷”な本質とは」を読む
僕自身、失恋をそれなりに経験してきたから
――常々、恋愛を語るのが苦手だと話されている又吉さんが、失恋をテーマにした作品を制作しようと思った経緯を聞かせてください。
又吉 恋愛において「こういう時はこうしたほうがいい」とアドバイスをするのはたしかに苦手なんですが、失恋は「恋愛がうまくない人」が重ねていくものじゃないですか。僕自身、失恋をそれなりに経験してきましたし、失恋をテーマにするのは自分の中ではとても自然な流れでした。
それで、本格的にカルタを作りたいと考えるようになった時にたまたま、たなかさんのことを知って。作品を拝見したら、ほぼ失恋カルタのようなことをやっていらっしゃって、ぴったりやん!と。そこから、当時のマネージャーがたなかさんに連絡をしてくれて、二人でたなかさんの作品展に足を運んで挨拶させてもらったんです。
たなか お話を伺って、たしかにぴったりだと思ったというか。私ならできるという確信がなんとなくあったので、ぜひぜひとお答えしました。
――又吉さん、たなかさんの絵のどんなところに魅力を感じられたか、具体的に伺えますか?
又吉 『失恋カルタ』に限らず、たなかさんの描く男女の姿にはすごく共感してしまうんです。僕はつい「幸福そうな二人だけど、このあと別れるかもしれない」というフィルターをかけて見てしまうんですが、そうすると余計に切なく見えてくる絵なんです。もっと言えば、お互いを信頼していて、本当に仲良くないと醸し出せない雰囲気が描かれているんですよね。だからこそ、切ないんですよね。
たなか 私は共感しすぎないところを大切にしているところがあるんです。母親からずっと「家族とはいえ、私たちは他人です」と言われて育ったので、恋愛に限らず、他者との距離感をいつもどこかで考えているのかもしれません。
又吉さんの書かれた詠み句は、個人的な失恋の感覚と、世間に共通する失恋の失敗、いずれもが入っているように感じました。
