欧米やオセアニアでは、サッカーやテニスなどと並ぶ人気スポーツのひとつとして根付き、観戦するファンも多いヨットレース。数多く開かれている大会の中でここ数年、「海のF1」と言われる高速レースが注目を集めている。それが、ロレックスがパートナーシップを結んでいるロレックス セール・グランプリだ。スリルとスピード感にあふれるレース展開のみならず、多様性の尊重や環境保全の視点を取り入れた運営も多くの共感を呼び、次世代のエンターテインメントとしてヨット界を牽引している。


先端技術の粋を集めた高速艇が空中を飛ぶように疾走する、比類なきヨットレース

 2019年の発足から、ロレックスがパートナーシップを結び、オフィシャルタイムピースを務め、2025年からはタイトルパートナーとなった国別対抗のヨットレース、ロレックス セール・グランプリは、全チームが同じ機材、同じ人数で戦う、公平性の高い「ワンデザイン」レース。現在、開催されているシーズン5は、2024年11月にドバイでスタート。創立当初6カ国だった参加国は年を追うごとに増え、今シーズンはオーストラリア、イギリス、ドイツ、ニュージーランド、デンマーク、スイス、カナダ、フランス、スペインとアメリカ、そして新たに参戦したブラジルとイタリアを含めた12カ国が、世界各地、12のセーリング会場で熱い闘いを展開中だ。開催地では接戦を間近に観られる観客席も設けられ、熱狂的な盛り上がりを見せている。

 シリーズでは大会ごとに設置される海岸沿いのコースで、5回のフリートレース(総レース)とその順位に応じて与えられたポイントで決まる上位3チームでの決勝レース、計6レースが行われる。各チームとも12の大会を通じてポイントを積み重ね、最終戦であるグランドファイナル出場、そしてそこでの総合優勝を目指す。分かりやすいルールやしくみに加え、10〜15分でフィニッシュするレースが次々と繰り広げられるテンポの良さも、人気が高まっている理由のひとつだ。

 だが、何といってもセール・グランプリの魅力は、最新技術で造られたヨットがもたらすスピード感にある。各国のクルーが操るのは、すべて同じ、カタマランと呼ばれる2つの船体を持つプラットフォームの下に、浮力を生み出す水中翼(ハイドロフォイル)を取り付けた、全長15メートル(50フィート)の高速艇「F50」。風速の何倍もの揚力を生成する、飛行機の翼のような形状の硬質セール(ウィングセール)を搭載し、最高時速は100キロに達することもある。研ぎ澄まされたフォルムにそれぞれの国のカラーをまとったヨットが何艘も連なり、水上を飛ぶように疾走するさまは壮観で、まさに海のF1レース。しかもエンジンが付いているレーシングカーとは異なり、風だけを動力にそれだけのスピードが生み出されることに、驚嘆せずにはいられない。

2025.08.12(火)
文=新田草子
協力=ロレックス