外食が続いて栄養バランスが乱れてしまった、冷蔵庫の余り食材や消費期限が迫る調味料の使い方がわからない……体や台所をすっきりさせる“食の帳尻あわせ”のヒントを、フードライター・白央篤司さんが日々の食体験とともに綴ります。


 我が家の冷蔵庫には大体いつも、「とりあえず買っておいて、ゆでるかチンしておいた野菜」が入っている。小松菜やほうれん草のゆでておいたの、あるいはもやし、刻んだピーマンを容器に移してチンしておいたの。すぐに使うわけじゃないけど買っておき、加熱だけした野菜類。この辺が、いわば「安心のたね」になっている。

 私はとにかくものぐさで、いつでもサッと動けるタイプの人間ではまったくない。料理は確かに好きなのだけれど、それと「日々作り続ける」のは全然別のこと。年を重ねるほどに不精を決め込みたい時間が長くなってしまい、自分でも困っている。

 コラムを書くにあたり「不精」を辞書で引いて確認してみたら、「ちょっとしたことをするにも、体を動かすことを面倒くさがること」と書いてあって、まさに私そのものだと恥じ入った。

 面倒くさがりではあるけれど、なるたけ日々おいしいものが食べたい。先日も近所の野菜直売所にすばらしく張りのいいほうれん草が並んでいて、思わず手が伸びた。「仕込みをしておくか」という気がやおら湧いてくる。こんなときは、家に帰ったら決して座らない(座ると大抵のことは面倒になるから)。そのままキッチンに進み、ボウルに水を張ってほうれん草を洗う。あ、その前にお湯を沸かして、ゆがく準備。直径大きめのフライパンを使うと青菜はゆでやすい、とは料理研究家の井原裕子さんに習った。大鍋に湯を沸かすのは手間でもあるし、時間もかかる。フライパンなら早く沸いて水も少なくて済むし、直径が長いとほうれん草をまんま横に入れられる。ちょっとしたことだが、下準備のハードルがグンと下がってありがたい。

 ほうれん草はひと株ずつ湯に入れて、小さいものならゆっくり10秒ぐらい、大きいものなら20~30秒ぐらいつかってもらい、ざるにあげておく。ほどよく熱が取れたところで容器に移し、冷蔵庫へ。この状態の青菜があると、おひたしも和えものも、麺類の具もすぐに用意が出来ていい。今の時期ならホワイトシチューなど、最後に加えてひと煮立ちさせれば彩りにもなる。

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