「子どもを産むのか、産まないのか」。その選択は、私たちの日常を大きく変えていきます。最新小説『あの子のかわり』で、親友の妊娠の知らせに揺らぐ女性の心情を描いた紗倉まなさん。出産、妊娠をめぐって生まれる言葉にならない違和感について、そして出産にまつわる「圧」について率直に語っていただきました。
「お母さんになりたい」と思ったことは一度もなかった
――多くの女性にとって、出産や子育てをする・しないという選択は、ライフスタイルを大きく左右する出来事であり、繰り返し語られてきたテーマでもあります。なぜ、今回このテーマを執筆しようと思われたのでしょうか。
18歳でAVデビューをしたことも関係しているのか、「結婚願望や出産願望はあるんですか?」と、ニヤニヤしながら聞かれることも多くて。さすがに令和になってからは、そうした質問自体がどうなのか、という価値観が広がり、直接的に聞かれることは減ったんですが、その代わりに、今度は自分自身が「あなたは結局のところどうするの?」と問いかけるようになったんです。
周囲の友人たちが出産していくたびに、心からおめでたいと思う一方で、「みんながかけがえのない経験をしているなかで、私はどうするんだろう」と考えてしまう。子どもを産むのか、産まないのか、その決断のカウントダウンが始まっているような感覚もあって、より切実に向き合わざるを得なくなりました。それが、このテーマを書こうと思った理由です。
自分の中に蓄積されてきた思いを、できるだけ取りこぼさないように、そんな気持ちで書きました。
――本作を書くことによって、出産に対する意識は変わりましたか? それとも、もともと抱いていた思いがより強くなっていったのでしょうか。
小学生の頃、「将来の夢はお母さんになることです」と話す子がいましたよね。でも私は、その感覚を持ったことがなかったんです。「大人になれば、いつか自然にそう思えるのかな」と漠然と考えながら過ごしてきましたが、結局、年を重ねてもその気持ちは芽生えなかったんです。
主人公の由良とも少し重なるのですが、私自身、母との距離感にずっと悩んできたこともあって、「自分は子どもを幸せにできる人間なんだろうか」と考えてしまうこともありました。なので、小説を書き進めるなかで気づいたのは、「自分はこう生きたい」という軸そのものは、ずっと変わっていなかったのだ、ということでした。
