平安遷都以降、貴族の別荘地として愛されてきた嵐山。その急峻な山肌に佇む「星のや京都」は、“水辺の私邸”をコンセプトに、千年にわたる和の美意識を今に映す風雅な宿です。

 ゲストは、グローバルボーイズグループ・INIのメンバー、許 豊凡(シュウ フェンファン)さん。初めて訪れる奥嵐山の地で何を感じ、どんな時間を過ごすのでしょうか。

 前篇では、 船によるドラマティックなアプローチから、茶、書、香といった和文化体験、この宿ならではの美食体験を中心に、豊凡さんの言葉を交えながらご紹介します。

 記事の最後には、豊凡さんが「星のや京都」で過ごしたスペシャル動画が! 併せてお楽しみください。


渡月橋のたもとから船に乗り、嵐峡の奥へ

 多くの観光客で賑わう嵐山・渡月橋のたもとに、「星のや京都」の舟待合があります。雪見障子越しのやわらかな光に包まれながら船を待つひととき、供されるのは香煎(こうせん)。茶事の待合にも通じる、さりげないおもてなしです。

 取材時はまだ桜が残っている時期で、窓に縁取られた庭にも花びらが舞い、豊凡さんの目を楽しませていました。

 「外の賑わいと切り離された舟待合に入り、初めて口にした香煎。いただきながら庭を眺めていると、だんだん心が落ち着いてきます」(豊凡さん・以下同)

 これから始まる非日常の予感とともに、船着き場へ。宿専用の船に乗り込み、大堰川(おおいがわ)をさかのぼります。川上からの涼やかな風を受けながら、人けのない嵐峡の奥へと誘われる約15分のクルージング。豊凡さんも期待に満ちた表情を見せます。

 ゆるやかに蛇行する翡翠色の川を進むにつれ、両岸の緑はいっそう濃さを増していきます。その先に見えてくるのが、「星のや京都」。

 この地にはかつて、大堰川を開削した京都の豪商、角倉了以の別邸がありました。その後、100年以上にわたり旅館として営まれ、2009年に「星のや」として再生された歴史があります。

「船が進むにつれて人の気配が薄れていき、日常と切り離された静かな世界へと向かっていく。そのグラデーションを心地よく感じました」

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