「空中茶室」で和文化にふれるひととき

 新緑に囲まれたアプローチを抜け、掃き清められた路地をたどると、そこは斜面に創られた池を中心とする「水の庭」。仏具をアレンジした楽器の演奏と、100年前の庭の遺構から復元された滝の水音がゲストを迎えます。

 フロントに連なるライブラリーラウンジは、ゲストが読書やお茶を楽しみながらくつろげるパブリック空間。その奥に、大堰川にせり出すように設えられた「空中茶室」があります。それは、平安時代の寝殿造の邸宅にあった釣殿(納涼や供宴のための場)のような、嵐峡の景観を心ゆくまで堪能できる特等席です。雅趣に富む景観に、豊凡さんも目を奪われた様子。

「嵐山の自然に包まれながらいただくお抹茶は、格別でした。五感を解き放ち、川のせせらぎや木々のざわめき、肌を撫でる風の匂いや温度を感じながら、ゆっくりと味わいました。何もせず、ただぼんやりと景色を眺める時間もいいですね。山と建築、そして川がゆるやかにつながるようなデザインが、そうさせてくれるのだと思います」

雅な愉しみ、聞香(もんこう)を体験する

 香木の香りを鑑賞する「香道」は、茶道、華道と並ぶ三大芸道のひとつですが、ほか2つに比べて目にする機会は限られています。星のや京都では、その奥深い世界を体験できるプログラム「聞香」を体験できます(1人3,388円。英語対応可)。

 教えてくれるのは、京都「山田松香木店」の指導を受けたスタッフ。香木の種類や、香文化の歴史に関するレクチャーを受けて、いよいよ実践です。

 炭団を埋めた聞香炉の灰をきれいな円錐になるよう整え、銀葉(ごく薄い雲母の板)をのせ、その上に小さく割られた香木をのせる。繊細な作業ですが、豊凡さんはさすがの集中力で、初めてとは思えないほどきれいな円錐形になっていました。

「心を沈め、感覚を研ぎ澄まして自分の知らない香りの世界へと踏み込んでいく“聞香”は、日常とかけ離れた新鮮な体験でした。伽羅の繊細で奥深い香りに触れ、静かに自分と向き合う時間にもなりました」

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