ラグジュアリーホテルブランド 「星のや」 が掲げる “土地と共鳴する世界観”を掘り下げる連載。

 第2回のテーマは「自然の美」。嵐山の自然と調和する「星のや京都」 の庭と、その背景にある『作庭記』の思想を知ると、平安の世から続く美意識が見えてくる。


嵐山の渓谷を借景にした静寂の宿

風景と心が響き合い嵐峡の自然に溶け込む滞在

 京都・嵐山の景勝地、大堰川の河畔に建つ全室リバービューの旅館「星のや京都」。ここでの滞在は、渡月橋のたもとから専用船に乗り、大堰川を遡ることから始まる。

 翡翠色の大堰川を進むにつれ、山影と川音がゆっくりと心をやわらげてゆく時間は、すでに非日常の入り口。急峻な斜面に位置する敷地では、風や光や木々と建物が、互いの気配を尊重しながら景色をつくりあげている。

 ここでは「星のや」が大切にする“土地と共鳴する世界観”が、言葉を超え、肌感覚として訪れた者の内側に沈んでゆく。

 建物の前身は、明治30年創業の旅館。当時の柱や天井を “洗い”によって蘇らせた建物は、長い年月を重ねた木の呼吸と、「星のや」らしい快適性が響き合う。壁に張られた京唐紙は、窓からの光によってゆらぐように表情を変え、空間にやわらかな気配を与える。

 宿の中心にあるのは、嵐峡の自然と調和した庭。120年以上前に先人が築き、「オンサイト計画設計事務所」の設計のもと「植彌加藤造園」が磨き上げた庭は、木々や苔が土地の空気と溶け合い、時の堆積がそのまま美しさとなっている。そこには春夏秋冬、朝昼夕夜、晴雨曇雪、花鳥風月―幾通りもの景色がある。

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。