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 那覇から車で北へ約1時間。読谷村の海岸沿い約1kmにわたって広がる「星のや沖縄」では、琉球の美学とおもてなしの心に触れる滞在プログラム「うとぅいむち滞在」を展開しています。国内外を問わず海辺のリゾートが大好きという内田也哉子さんが体験しました。


沖縄伝統の「ぶくぶく茶」で旅の疲れを癒す

 沖縄屈指の自然海岸に沿って客室が建ち並ぶ「星のや沖縄」。多彩な滞在プログラムのなかで、特に話題となっているのが、琉球の美学とおもてなしの心に触れる「うとぅいむち滞在」です。

 「うとぅいむち」とは琉球の言葉で「おもてなし」の意味。かつて琉球王国では、中国の皇帝が遣わした使節である冊封使(さっぽうし)を、盛大にもてなしていました。宮廷料理や泡盛、宴を盛り上げる琉球舞踊や歌三線などの芸能は、冊封使への「うとぅいむち」を背景に発展したのです。

 「星のや沖縄」で待つのは、美しい自然とホスピタリティだけではない、沖縄の奥深い魅力に触れる体験。これまで世界各地を旅してきた也哉子さんは、そこに何を感じるのでしょう。

 到着後は海を間近に感じる客室で、沖縄の伝統茶「ぶくぶく茶」と、冊封使をもてなすために中国と琉球両方の食文化を取り入れて発展した琉球菓子がふるまわれます。

 ぶくぶく茶の道具として運ばれてきたのは、大きな木製の鉢と竹の茶筅。煎った米を硬水で煮出した米湯と、さんぴん茶(香片茶=ジャスミンの香りをつけた中国由来のお茶)を鉢で合わせ、茶筅で泡立てていきます。

 「鉢に茶筅がこすれる音が波の音にシンクロして、まるで音楽みたい」と、興味津々の也哉子さん。しばらくすると、きめの細かい泡がモコモコとふくらんできます。

 小さなやちむん(沖縄の焼きもの)の茶碗に、別途用意したさんぴん茶を注ぎ、その上に先ほどの泡をのせ砕いた落花生をちらせば、ぶくぶく茶の完成です。上からかぶりつくように飲むのがコツとのことで、也哉子さんもさっそくトライ。

「メレンゲのように滑らかな泡の口当たりと、煎り米や落花生の香ばしさ、さんぴん茶の爽やかな風味が相まってホッとする味わい。意外と飲み応えがありますね。琉球菓子は奥ゆかしい甘みで、ぶくぶく茶によく合います」

 沖縄は、いまも多くの日本人にとって“身近な遠いリゾート”。やっとたどり着いたという喜びのなか、旅の疲れを癒してくれるぶくぶく茶は何よりのおもてなしです。

2025.02.15(土)
文=伊藤由起
写真=橋本 篤
写真協力=星のや
ヘアメイク=布施綾子
協力=星野リゾート