台湾・台中駅から東へ車で1時間半。3,000メートル級の山々に抱かれた温泉郷、谷關(グーグァン)の高台に「星のやグーグァン」はあります。日本統治時代に湯治場として発展した谷關は、台湾原住民・泰雅(タイヤル)族の集落としても有名。現在発売中の「CREA Due 愛しの台湾」でご紹介しきれなかったアクティビティに沿って、古の谷關を旅します。
日本の面影が残るレトロ温泉街を歩く
「星のやグーグァン」では、谷關(グーグァン)温泉の歴史をたどるアクティビティ「グーグァン歴史散策」を開催。スタッフのガイドでレトロな温泉街を歩きながら、土地の歴史をさかのぼります。
日本統治時代の1907(明治39)年、台湾原住民の泰雅(タイヤル)族によって発見された谷關温泉。大甲渓の流れに削られた谷間に、いまもこんこんと湧き出ています。当時は「明治温泉」と呼ばれ、警察の招待所もつくられた台湾有数の保養地でした。
泰雅族の意匠が施された温泉街のランドマーク「谷關吊橋」から下をのぞくと、水着姿で和気あいあいと温泉を楽しむ老若男女が。台湾の温泉はこのスタイル(水着&混浴)が多いのですが、日本の銭湯に似た親しみを感じます。界隈には、比較的大型のスパリゾートが立ち並び、いずれも趣向を凝らしたお風呂が楽しめる“温泉天国”となっています。
水力発電所が売るアイスキャンディの謎
谷關吊橋を渡って少し歩くと見えてくるのは、水力発電所の宿舎。中には入れませんが、こちらの購買部で販売されている名物のアイスキャンディは「星のやグーグァン」でもいただくことができます。
なぜ水力発電所でアイスキャンディなのか? それは、ダム建設の際、コンクリートの冷却のために導入された製氷機を利用して、従業員のサービスとしてつくられていたものが、後に一般販売されるようになったものだそう。
ミルク、梅子、フルーツなどさまざまなフレーバーがありますが、珍しいのが「五葉松」。いわば松の葉の青汁味なのですが、意外と爽やかでおいしいのです。騙されたと思って食べてみてください。
温泉街の中心には、2021年にリニューアルした谷關のビジターセンター兼博物館があります。谷關の歴史や地理、変化に富む生態系などがわかりやすく紹介されており、谷關ツアーの拠点として、休憩スポットとしても覚えておきたいスポット。豊かな自然の中に生息する鳥の図解や蝶の標本展示は一見の価値ありです。
「星のやグーグァン」では、ほかにも地域の自然や文化に親しむさまざなアクティビティがあります。お次は、泰雅族の暮らしや文化に触れる館内でのアクティビティをご紹介します。
2024.06.02(日)
文=伊藤由起
写真=榎本麻美