この記事の連載

土曜日の深夜23時から生配信サービス「TwitCasting」で配信中の人気怪談チャンネル『禍話(まがばなし)』。2016年のスタートから積み重ねてきた怪談の数は、今では軽く数千話を超えており、ボリュームもさることながらそのクオリティの高さでもホラーファンや業界関係者たちを虜にしてきました。
今回はそんな禍話から、最愛の彼女の実家を訪れた青年が目撃する、者奥に潜むおぞましい因習にまつわるお話をご紹介――。(前後篇の後篇)
番頭に導かれて進んだ暗闇

突然のことに面食らって立ち尽くしているGさんを申し訳なくなったのか、番頭さんは独り言ともつかない調子で、この奇怪なしきたりの由来を語り出しました。
「何代か前の方がきっかけなのですよ。死期を悟ったらいつもは自らのご意志で山に行くのです……でもね、不幸にもたまたま狩りかなんかでそば通っていた人が見てしまったらしくて、むごいお姿になってしまったのもきっとそのせいなのです」
「え、あの……」
「その方は●●さんというお名前でして、今から行っていただくお部屋に罰として安置しているんです」
番頭さんが言ったよく聞き取れない名前。しかし、それよりもGさんは話の後半部分が引っかかりました。
「安置って、お墓みたいなものですか?」
番頭さんは手に持っていた大きな懐中電灯を手渡してきました。
「正直言いますと、最近、外から来た方がなかったもので中がどうなっているのかは分からず、それを確かめてきていただきたいのです」
「ですが……急にこんな……」
「行って戻って来るだけですので。私はずっとここでお待ちしております。奇妙かとは思いますが、お嬢様にも関わることですので、ここはどうか……」
ギギギギッ……。
番頭さんが開けた扉の向こうには、ジメジメとした暗闇が広がっていたそうです。
2025.08.15(金)
文=むくろ幽介