この記事の連載
「ご遺体は安置されていましたか?」

「どうでした? ご遺体は安置されていましたか?」
「あ……安置もなにも……じ、地面に打ち捨てられていましたよ! しかも、生っぽいというか……ほ、本当に先代のご遺体なんですよね!?」
「え、さ、祭壇はありませんでした……?」
「ありませんよ、そんなもの!」
Gさんの言葉を聞いた番頭さんは青ざめてしばし絶句していましたが、意を決したように立ち上がると、1人物置小屋の外に出て扉を閉めました。
「イヤァァァッ!!」
「なんちゅうこっちゃ……」
口々に沸き起こるざわめき。どうやら番頭さんはGさんが見た光景を親族一同に伝えたようでした。
Gさんがおずおずと扉を開けると、先ほどまで笑顔だった親族は困惑と衝撃の入り混じった表情で彼を見つめ返しました。
「……ご苦労やったねぇ、助かったわ。今日はもう休んでええけん、ありがとね」
ヨロヨロと自室に戻ったGさんでしたが、あんなことがあっては当然眠ることなどできず、自分が見たものが酒に酔った夢なのではないかと思いたかったそうです。
ですが、部屋の向こうからドタバタとかける足音と、廊下の向こうから漏れ聞こえてくる悲鳴混じりの声が、Gさんのそんな淡い希望を打ち砕きました。
2025.08.15(金)
文=むくろ幽介