女性が差別・搾取される世界とどう向き合えばいいのか。最新作となる『YABUNONAKAーヤブノナカー』でその問題と向き合った作家・金原ひとみさん。かつては問題を無視して無自覚に加担してきたのではないかという罪悪感もあり、声を上げることに抵抗があったといいます。
しかし今や、時代の変化は待ったなし。編集部に集まった「#女性として生まれてきたがゆえに起こる悩み」に対し、金原さんがかけてくれた言葉とは?
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変化は遅いが……見え始めた希望の兆し

――仕事、家事、育児、容姿、言葉遣い、服装……女性はあらゆる場面で男性以上に完璧で清純であることを求められてきました。不倫の話題も女性側へのバッシングが男性よりも数倍多いことも気になります。
金原 私は最初からその土俵を降りて「清純ておいしいの?」で生きてきたので、誰も私に完璧を期待してくることはありませんでしたが、いちいちそのエクスキューズをしなくてはいけないことがそもそもおかしいことですよね。
――しかもネット空間では「もの言う女性」は叩かれるという現状も続いています。女性の地位向上が進む中で、「ついていけない人たち」によるバックラッシュが起きている。
金原 声を上げた方々は、本当に大変なものを背負って戦ってくれています。敬意を持っているし、私もまた、自分のやり方で声を上げていきたいと思っていますし、根本的な部分では強く共鳴しています。一方で、少し前に作家の柚木麻子さんが行った講演の記事を見かけました。「シスターフッドに頼るな」というタイトルです。
日本では女性同士の優しさ、連帯に頼りすぎる傾向があって、そこにかまけて社会制度は変わらないという悪循環を私自身も実感してきたので、この議題で話された柚木さんはさすがだなと思いました。
――どんなにシスターフッドという言葉が市民権を得ても、ただの耳障りのいいコンテンツのままではダメなんですよね。それでもまだ、あらゆる被害は自分のせいだと思い込んでいる方もいると思うので、多くの人に届いてほしいです。
金原 ここ数年とくに、意識の格差ができているのを感じます。同じ女性でも、周りの環境や世代でかなり激しくグラデーションができてしまっている。でも、声が多くなって可視化されていけば、それらを目にする機会も増え、それぞれが意識的に考えるきっかけが増えると思います。
それにその声に対して真剣に考えてくれる人が、女性だけでなく男性にも増えてきている実感もあります。変化は遅いですが、男性の育児がかなり一般的になってきたことなど、ちょっとずつ時代のスタンダードが変わりつつある。そこは希望を持てるところだと思います。
2025.08.30(土)
文=綿貫大介
写真=佐藤 亘
CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。