この記事の連載

個人の問題はたいてい構造やシステムの問題

――絶望的なことが日常的に起きている中で、私たちはどう前に進んでいけばいいのでしょうか

金原 やはりこれらのことは「個人的な資質の問題じゃない」という認識を一般化していくことが大事だと思います。母親の苦悩もあらゆるハラスメントも、一人で戦っているような気持ちになるけど、結局のところ構造やシステムが元にある問題なんです。

 自分の苦しみに埋没するのではなく、俯瞰視点で捉えてみると物事がクリアに見えてきますし、同じように虐げられている人がたくさんいると知ることもできます。

 横の繋がりと、俯瞰した視点、これらを保ち、自分自身と社会を見つめていくこと。自分を守るためにも、未来のためにも、男女を問わずこの二つが重要になってくると思います。

――金原さんはフェミニズムをどう学ばれてきたのでしょう。

金原 もともと貪欲に学んでいたタイプではないですが、上野千鶴子さんの著書や関連書籍はちらほらと手に取ってきました。ただ書評委員をやっていた頃はいい機会だと思って積極的に選ぶようにしていました。

――それで言うと金原さんの書籍も救いになるものが多いです。本との出会いも重要ですね。

金原 本を読むと、これまでの経緯や現在地が把握しやすくなると思います。自分自身の目で見ているだけではわからないことも、別の人の視点から見ると気づけることがあるので。研究書でも批評でも小説でもいい。問題にどういう風にコミットしていくべきかを考える上でも、重要なツールだと思います。

金原ひとみ(かねはら・ひとみ)

1983年、東京都生まれ。2003年に『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。04年に同作で芥川賞受賞。近著に『腹を空かせた勇者ども』『ハジケテマザレ』『ナチュラルボーンチキン』などがある。

YABUNONAKA―ヤブノナカ―

定価 2,420円(税込)
文藝春秋

性加害の告発が開けたパンドラの箱——MeToo運動、マッチングアプリ、SNS……世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?「わかりあえないこと」のその先を描く、日本文学の最高到達点。

» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

← この連載をはじめから読む

2025.08.30(土)
文=綿貫大介
写真=佐藤 亘

CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

1冊まるごと人生相談

CREA 2025年夏号

母娘問題、職場の人間関係から、性やお金の悩みまで。
1冊まるごと人生相談

定価980円