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暗い地下道を進んで目にしたものは

地面をくりぬいてできた地下道には、豆電球のようなものが電線とともにひかれていましたが、懐中電灯がないと足元もろくに見えない程度の弱い明かりでした。
階段を降りてから3回ほど角を曲がった先で、Gさんは思わず息を飲みました。
「うっ、うわあぁっ!!」
そこにあったのは先祖の墓でもなんでもなく、ただ洞穴に打ち捨てられている血まみれの遺体と着物でした。
恐ろしいことに、その遺体は原型がわからないほど損壊しており、先ほど手をかけたかのように“新鮮”で赤々としており、腐敗臭のようなものはなかったのが余計に恐ろしかったそうです。
一体どういうことだ……これは誰かが人を殺してここに置いたということか!? 自分は、何か恐ろしい殺人事件にでも巻き込まれているのでは……Gさんがそう思った時でした。
「うぅぅ……うぅ……」
その遺体、いや正確に言うと倒れている遺体のすぐ上、仮に遺体が目の前に立っていたらここに顔があるだろうなという位置から、男のうめき声が聞こえてきたのです。
「ワ、ワアアァアアア!!」
Gさんは叫び声を上げ、何度も水たまりに足を取られつつ、猛スピードで来た道を駆け戻ったそうです。
「た、助けて!!」
「どうしました!?」
「と、扉閉めてください!!」
バタン……。
Gさんが物置の中で四つん這いになって息を整えていると、番頭さんが膝をついて声を荒げながら聞いてきました。
2025.08.15(金)
文=むくろ幽介