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これがRさんとの最後の別れに

「もうあかん、そんなことやったらもうあかんわ。この家はもう終わりや」

「でも、彼のこと大好きやのに……別れないかんのかなあ?」

「それは、たぶん別れないかんやろうな……」

「ううぅ……」

  Gさんは、吐き気となぜか溢れてくる涙を堪えるように悲鳴から背を向けて布団をかぶったそうです。

◆◆◆

 翌朝の朝食は昨夜の宴会が嘘のように静かで、重く苦しいものでした。

 それでもなお、親族や番頭さんはGさんに優しく微笑んでくれていたそうですが、隣に座るRさんはずっと下を向いて泣いていたそうです。

 朝食を終えた後、Gさんは1人車で帰ることになりました。

 普通なら一緒に帰らないのかと驚くところでしょうが、GさんはこれがRさんとの最後の別れになることが、なんとなくわかっていたそうです。

「またね……本当に、ありがとうね」

「……うん、気にしないで。こちらこそ、ありがとう」

2025.08.15(金)
文=むくろ幽介