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 2024年には、大河ドラマでの気品あふれる姿でも話題を呼び、ドラマや映画に引っ張りだこの俳優・塩野瑛久さん。忙しい日々のなかでも「大切な人への贈りものを選ぶときには何時間も費やす」という、ギフトを大切に想う気持ちを伺いました。

コンプレックスを手放し、自信を構築するための「美容」

──豊富な美容知識を持つ塩野さんですが、美容に興味を持つようになったきっかけは?

 美容に関心を持ったのは仕事を始めた17歳のころからなのですが、きれいになりたいとか、メイクを楽しみたいと思って始めたわけではなくて。当時はニキビや肌あれがコンプレックスでケア方法を調べては試していたので、詳しくならざるを得なかっただけというのが正直なところです。ですから、“美容男子”と言われると、ちょっと違和感があります。

 かつて僕は肌を隠すためにマスクが外せない時期がありました。でもスキンケアをするようになって少しずつ肌が変わっていくことで前向きになり、人の目をしっかり見られるようになり、逸らすこともなくなって……。

 僕が出演する作品を見てくださる方に「ニキビが気になってセリフが入ってこない」と思われないように、“役にとってのノイズ”はなくしたいと始めた「美容」というものが、役者としてだけでなく、ひとりの人間としての自信をもたらしてくれたんだなと気付いたのは、ずいぶん後になってからのこと。日々の積み重ねが人柄を構築する要素になると思うと、“塩野瑛久”は美容によって育てられた部分があるのはたしかですね。

目標に向かって、ひた走る姿こそが美しい

──2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』のキャストのイメージ写真が発表されたとき、塩野さん演じる一条天皇が「美しすぎる」と大きな話題になりました。「美しい」と言われることも多いと思いますが、塩野さんが追い求める「美しさ」とはどういうものなのでしょうか。

 内に秘める気骨みたいなものかな。信念を持ってがむしゃらに進む姿こそが美しい、と思っています。僕の俳優人生は順風満帆とは言い難いのですが、置かれている状況をいかに自分にとって意味のあるものにしていくかを考え、前だけを見続けるよう自己暗示をかけてここまできました。

 人生において後悔という言葉を使いたくないから、岐路に立ったときは、とことん悩み抜き、「全力を出し切った」と断言できる答えを出します。選んだ道が時として険しいこともありますが、未来へつながると信じて突き進んでいくタイプです。多くの方が「美しい」と言ってくださる評価のなかに、そういった泥臭い内面についての評価も含まれているなら、より嬉しいなと思います。

2025.08.19(火)
文=金子優子
撮影=嶌原佑矢
構成=渋谷香菜子
ヘア&メイク=時田ユースケ
スタイリング=井田正明