人気声優・佐倉綾音さんがパーソナリティを務めるTBSラジオ『佐倉綾音 論理×ロンリー』。「何事も論理的に考える」という佐倉さんの人柄が気になり聴いてみると、大好きだという『オモコロ』の魅力を熱く語ったり、自身の名前を呼び間違えた別番組のパーソナリティに差し入れを要求したりと、“論理的”どころではないパワフルな魅力が炸裂していました。このような番組のスタイルに大きく影響したのは、声優業界に生きる彼女が感じてきた偏見や問題意識だったそうで――。
「ラジオだとあんなに喋るの!?」と驚かれることも

――『論理×ロンリー』が始まって3ヶ月半が過ぎましたが、同業者の皆さんからの反響はいかがですか?
どちらかというと先輩のほうが聴いてくださる方が多くて「ラジオにたくさん出ているけど、何屋さんになろうとしているの?」と言われたりもしました(笑)。私は仕事の現場ではほとんど喋らないので“良い子”にしているところしか見たことがない先輩に「ラジオだとあんなに喋るの!?」と驚かれることが多いです。
――佐倉さんは水曜日は特にお忙しくて、一日の一番最後の仕事が『論理×ロンリー』の生放送なんですよね。
そうなんです。今日も生放送の前に5本のお仕事をしてきました。多い日は一日で9本ぐらいあるので移動中の30分でスイッチを切り替えます。そういう特殊な訓練を連日受けてきたことが、今に生きている気がします。
ラジオで「オープニングではこの話をして、次にあの話をする」といった構成や時間の配分を考えられるのは、15歳から始めた声優の仕事で身につけた特殊技能なのかもしれません。
――頭が休まらなくて、ずっと考え事をしているそうですが……。
仕事の切り替えが早いという話をしましたが、日常生活で「ラジオで何を話そうかな」と考えていることも多いですね。お風呂に入っている時も、寝る前も、トイレの中でも急に自分のひとり喋りが始まって「この内容で話そう」と思ってトイレを出た瞬間に忘れる、というようなことを繰り返しています(笑)。
安住紳一郎の“ポロッと出る本質”に着目

――佐倉さんは安住紳一郎さんの大ファンで、昨年の10月には『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ)の安住さんの代演を務めましたが、そもそも安住さんが気になったきっかけは何ですか?
小学生の頃に『ぴったんこカン・カン』(TBSテレビ)で知りました。私はもともとアナウンサーさんの動向が好きで、自我を出すことなく、アクセントに囚われ続けながら、報道にも関わるなかで、うっすらと滲み出る抑制しきれない人間味に面白さを感じていました。しかも安住さんからポロッと出る本質はほかの人とは圧倒的に質が違う感触がありましたし、穏やかさからくる安心感も抱きました。
――小学生とは思えないほど、冷静に見ていらしたんですね。
そうかもしれません。その後、中学生の頃に『日曜天国』を知って聴いてみたら、安住さんの本質がテレビに出ている時と比べて純度がとても高い状態で放出されていたので驚きました。それ以来、ずっと聴き続けています。
――ハマった番組といえばJ-WAVEで放送されていた『GROOVE LINE』にハマっていたことも『論理×ロンリー』で話していて驚きました。
『GROOVE LINE』は母が聴いていたのをきっかけに聴き始めたのですが、初めて聴いた時の衝撃が大きくてハマりました。ギリギリまで踏み込むピストン(西沢)さんと、軌道修正しようとする秀島(史香)さんの掛け合いが好きだったんです。今ではコンプライアンス的に難しそうな内容ですが、人間臭い雰囲気がたまりませんでした。
ほかにも鷲崎健さんと浅野真澄さんの番組『A&G超RADIO SHOW~アニスパ!~』(文化放送)にもハマっていて、台本に捉われないフリートークの本質が見える番組が好きでした。
パンサー向井出演回の衝撃

――フリートークといえば『論理×ロンリー』にパンサーの向井さんが出演した回(6月11日放送)のやりとりは、通常の雰囲気とは異なるトークバトルでしたね。
あの回は今自分で聴き返しても面白くて、放送中は余裕がなくて聴き逃していた向井さんの言葉も汲み取って楽しんでいます。向井さんが謎のブーストをかけて番組に向かい合ってくださったことが嬉しかったです。とてもありがたい時間でした。あの日は放送が終わって向井さんを送り出したあと、スタッフみんなも嵐が去ったあとのように呆然としていましたね。向井さんのあのモチベーションは、どこからきたんでしょう?
――逆に、佐倉さんもさまざまな番組にゲストとして出演することがありますが、その番組のパーソナリティや番組の雰囲気に合わせますか? それとも気にせずに話しますか?
完全に合わせに行きます。出演する番組を聴いている方々がどんな方なのか、自分なりに分析します。まだ自分の立ち回りを確立していなくて、日常生活でも常に人の顔色を窺っているくらいなんです。お相手の方にツッコミを入れてもいいのかどうか迷って、放送が終わってから「やっぱりツッコミを入れればよかった」と反省することもあります。
2025.07.23(水)
文=やきそばかおる
撮影=佐藤 亘