自分をキャラクター化し、自分なりの思想を隠し持つ

――『論理×ロンリー』は、ほかの声優のラジオ番組とは違う雰囲気の番組にしようとする信念を感じます。この番組での佐倉さんは、ご自身からみてどんな立ち位置ですか?

 どこまで話していいのか分かりませんが、『論理×ロンリー』では自分を強めにキャラクター化しています。理由としてはここ数年、声優という立場に関するある思いがあるからです。女性の声優は、高い声で耳触りの良いことだけを言うべき存在という都合の良い偏見を感じることがあって、ともすれば舐められてしまう対象になりがちな気がしていて。ひとりの人間だということを分かってほしいんです。『論理×ロンリー』では通常の声よりも少し(キーを)下げて喋っています。これはかなり意識して、初回から決め打ちで喋っていました。

――確かに、さまざまな思いを込めているのを感じます。

 声優業界やアニメ業界は、そういった話にあまり踏み込んではいけないという暗黙の了解がある気がしています。私もなるべく立ち入らないようにしていたのですが、他の業界の方々と話していて「やはり、この業界は思慮が遅れているのではないか」と痛感しました。他の業界の方々がしっかりと向き合って話し合っていることに、私たちは目を背け続けている気がしたんです。そこで勉強をして、自分なりの思想を隠し持つことにしました。

――そうだったんですか。

 『論理×ロンリー』が始まる前は、楽しい話やポジティブな毒を通じて、聴いた人が「次の1週間も頑張ってみようかな」と思えるぐらいの番組にしようと思っていたのですが、私の中で目標を胸に秘めた結果、スタッフの皆さんからは「こんな番組になるはずじゃなかった」と言われました。取り敢えず「ごめんなさい」と思っています(笑)。

――ラジオにハマった佐倉さんが、今はラジオで話す側にもなりましたが、もしも10代の時にラジオの楽しさに出会っていなかったら、どうなっていたと思いますか?

 なんらかの形で探し出していたんじゃないでしょうか(笑)。人間のコミュニケーションの基本である会話だけを抽出した音声コンテンツは、かなり自分向きですから。

佐倉綾音(さくら・あやね)

声優。1月29日生まれ、東京都出身。青二プロダクション所属。ファンからの愛称は“あやねる”。2010年にデビューし、『PSYCHO-PASS サイコパス』の霜月美佳役、『進撃の巨人』のガビ・ブラウン役、『僕のヒーローアカデミア』の麗日お茶子役、『五等分の花嫁』の中野四葉役などで注目を集める。アニメやゲーム、ナレーション、ラジオなど多岐にわたって活躍中。

TBSラジオ『佐倉綾音 論理×ロンリー』

毎週水曜 22:00~22:55
https://www.tbsradio.jp/sakuraron/
https://x.com/sakuraron954

Column

TALK TIME

ゲストの方に気になる話題を語っていただくインタビューコーナーです。

(タイトルイラスト=STOMACHACHE.)

2025.07.23(水)
文=やきそばかおる
撮影=佐藤 亘