101歳を迎えた作家の佐藤愛子さん。現在は介護施設に入られていますが、愛子節は健在です。そんな愛子さんの「恋」と「愛」についてうかがったインタビューを、『週刊文春WOMAN2025夏号』より、一部を編集の上ご紹介します。

 佐藤愛子さんの若かりし日のことで、気になっていたテーマがあった。何かというと、恋愛だ。実は娘の響子さんと孫の桃子さんから1年前に“さわり”を聞いたのだが、意外すぎる内容だったこともあり、その日はそのままにした。

 

 それから1年――。佐藤さんは大腿骨骨折の手術も無事に終え介護施設に戻ったものの、体調は日によって違うという。となると、数十年もさかのぼる「恋愛」の話を直接伺うことは難しそうだ。そこで響子さんと桃子さんに1年越しの「佐藤さんの恋愛」を語っていただくことにした。

有名なプロ野球監督のAさんと…

響子 母の恋バナですか(笑)。

桃子 私が祖母の恋愛について知ったのは、高校生の頃だったと思う。ふーん、ばあさんも恋愛するのかって。

響子 するでしょう。情熱的だもん。火山を抱えてる人だから。何で知ったの?

桃子 たぶん、ウィキペディア。大学生になって相手をはっきり知って、「祖母の不倫をウィキで知る」とツイッターでつぶやいた。

響子 私が小学校5年生くらいから、有名なプロ野球監督のAさんとつきあっていました。母より少し年上、お互いアラフィフですね。妻子のある人でしたけど、私は「恋愛」のこともわからない年ですし、ましてや「不倫」なんて全然。よく家に来る人で、来ると母の笑い声が多くなるなっていう感じで。

桃子 (佐藤さんの夫で響子さんの父である作家の)田畑麦彦とは?

響子 もちろん離婚していた。父は本当に家にいない人でしたけど、その人は来ると一緒に遊んでくれた。「響ちゃん、走ってごらん」「いい走りするね」なんて言ってくれてうれしかった。優しい人でした。

桃子 ということは、その人との関係が母さんの幼少期にも影響を与えたの?

響子 そういうことではないけど、ああいう母と2人きりの暮らしに、きれいな風穴があいた感じがしました。外からの空気が流れてきて、母の火山もその人の方に向いたから、それはこっちとしては喜ばしいことで。母もちょっと華やかになってましたしね。

桃子 えーっ。

2025.07.07(月)
文=矢部万紀子