佐藤愛子さんはおしゃれな100歳――週刊文春WOMAN2024春号、夏号と2度のインタビューでお目にかかり、実感した。色合わせやさりげないスカーフ遣いなど学びたいテクもたくさんあり、次はファッションについてのインタビューをとお願いした。だが残念なことに、酷暑で体調が不安定とのこと。それでは、と夏号に続き、同居する娘の響子さんと孫の桃子さんに「佐藤愛子のおしゃれ道」を語っていただくことにした。『週刊文春WOMAN2024秋号』より一部を抜粋して紹介します。

着物は買うのに流行りのバッグは絶対買ってくれなかった

響子 洋服はあつらえるのが好きでしたね。近所の方や三越にも頼んでいましたが、よそいきは専ら「小林マダム」という方に。マダムの家が田園調布にあり、私も子供の頃連れられていきました。坂の上の瀟洒な洋館で、毛足の長い白の絨毯にバイオリンと楽譜立てが置いてありました。

桃子 70年代の漫画みたい(笑)。おばあちゃんは服も好きだけど、情熱で言うなら断然、着物だよね。

響子 大変な「着物警察」ですから(笑)。首が埋もれるくらいもこもこした白いショールを憎んでね。ニュースで成人式の振袖姿が映るたびに「やめてくれーっ」って。

桃子 紅白歌合戦を見ている時もうるさい、うるさい(笑)。私は椎名林檎さんが好きなのだけど、彼女が着物で登場すると、仕立てや着方がどうこう言うんですよ。

響子 石川さゆりさんは楽しみにしているんですよ。今回はどんな着物だろうって。

桃子 石川さんは帯締めを斜めにされますよね。祖母は「あれはおしゃれだ」と言って、なぜか着物警察に引っかからない(笑)。

 

響子 京都から呉服屋さんが、年に3、4回来ていました。四畳半の和室に反物を並べて、呉服屋さんとのやりとりそのものを楽しんでましたね。自分には年齢的に合わないけれど気に入った反物があると私用に買うんです。でも私はいらんのですよ。『なんとなく、クリスタル』の世代なんですから。

2024.10.07(月)
文=矢部万紀子