桃子 容姿の衰えをくよくよするなど、軟弱者だという考えで。小さい頃から、「心に錦をまといて身に襤褸(らんる)をまとう」と言われていました。襤褸っていうのはボロのことだよって。

響子 お説教が好きだから(笑)。世間の価値観に対してのお説教を私たちにするんです。

桃子 でも、フェイスシャドウを買ったんだよね。

響子 ノーズシャドウね。私が小学生の頃、薬局の化粧品売り場で母が、「鼻を高くするようなものって、何なんでしょう?」と聞いたんです。「人に頼まれたもんでね」と言い訳しながら。

桃子 あの人に頼む人はいないと思う。

響子 そこですすめられたノーズシャドウを買って帰り、気づいたら減っていて。「ママが使ってるのね」と言ったらゲラゲラ笑って、「鼻高化粧しなくちゃね」って。自分の顔のここが嫌というのは誰しもあって、母には鼻だった。

桃子 濃い赤の口紅を選んだり、セルフプロデュース能力が高いところはあると思います。まだ祖母がもっと若かった時、もし自分が老耄(ろうもう)して、写真取材を受けていたらその時は止めてと母に言っていたんです。老耄した自分を世間に晒したくないからって。それもその一環だと思います。

響子 誇り高くありたい人なんです。

●濃紺地に井桁を表した小紋を母のシナさんから受け継いだ話、3、4日かけて行った虫干しや畳紙に「天皇陛下」と書いた驚きの理由、着物をリフォームしたワンピースをお召しの写真、そしてお電話でうかがった佐藤愛子さんとの一問一答など、記事の全文は『週刊文春WOMAN2024秋号』でお読みいただけます。

娘・杉山響子

すぎやまきょうこ/1960年生まれ。玉川大学文学部卒。両親の離婚後は、母の佐藤愛子と暮らす。

孫・杉山桃子

すぎやまももこ/1991年生まれ。立教大学文学部卒。現在は「青乎(あを)」として、映像や音楽作家として活動。

さとうあいこ/1923年大阪府生まれ。甲南高等女学校卒業。1969年『戦いすんで日が暮れて』で第61回直木賞受賞、2000年、65歳から執筆を始めた佐藤家3代を描く『血脈』の完成により第48回菊池寛賞受賞。2017年旭日小綬章を受章。

聞き手・文 矢部万紀子

週刊文春WOMAN Vol.23 24年秋号(文春ムック)

定価 715円(税込)
文藝春秋
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2024.10.07(月)
文=矢部万紀子