NHK連続テレビ小説『あんぱん』において、戦争と平時の記憶をつなぐ二人の俳優が注目を集めている。

 妻夫木聡(44)が演じる八木信之介と、二宮和也(42)が演じる柳井清。一人は理不尽な暴力が横行していた軍隊という組織の中で人間性を保とうとする上等兵として、もう一人は既にこの世にはいない父親として、それぞれ主人公・嵩(北村匠海)の人生に深い影響を与えている。(全2回の1回目/続きを読む)

「こんなこと二度と起こしてはいけない」と…『あさイチ』での涙に反響

 7月28日放送のNHK『あさイチ』における妻夫木聡の姿は視聴者の心を揺さぶった。番組では「戦後80年 妻夫木聡のもっと知りたい沖縄」という特集が組まれ、妻夫木が沖縄県宜野湾市の佐喜眞美術館で沖縄戦を描いた連作絵画「沖縄戦の図」を鑑賞する様子が放送された。

 絵を前にした妻夫木は涙し、「初めてこの絵を見たとき、本当に『知っていないといけないこと』を知ったというか、本当の意味で声を聞いたというか、ただ文献を見て知るだけじゃだめなんだな」とコメントした。

 スタジオで改めて思いを問われた彼は、涙を流しながら「沖縄戦の図は戦争の現実なんですよね。実際に親が子を、夫が妻を、若者が年寄りを、自分で手にかけてそういうことがつい80年前まで起こっていたっていう」「絶対知ってなきゃいけないし忘れちゃいけないし、これからも考えていかなきゃいけない。こんなこと二度と起こしてはいけない」と反芻するように語っている。

『あんぱん』では過酷な減量に臨んだ

 出演中の朝ドラ『あんぱん』では戦争シーンを撮影するため3週間に及ぶ過酷な減量に臨んだ。妻夫木は「全く食べなかったら撮影にならないので、朝だけ食べて昼と晩は食べないようにしていました」(スポニチアネックス、6月21日)と振り返っている。

 体重を減らす過程にもこだわり、「徐々に痩せていきたいなと思って、段階的に食事を少なくしていきました。極端に食べる量を半分にするとか、夜は炭水化物を取らない調整をして、最終的には野菜のみにして」(同上)いたという。やなせたかし氏が戦争で体験した飢餓の実感を表現すべく、自らの肉体で追体験して臨むという、役者魂あふれる取り組みだった。

2025.08.27(水)
文=田幸和歌子