NHK連続テレビ小説『あんぱん』の第18週「ふたりしてあるく 今がしあわせ」では、想いを確かめ合った嵩(北村匠海)とのぶ(今田美桜)の新たな暮らしが描かれた。
どぎまぎしている2人がなんとも微笑ましく、心がときめく展開の中、なんと第86話のラストでは松嶋菜々子演じる嵩の母、登美子が再登場した。

“毒親”か、それとも“カッコいい女性”か?
登美子は嵩とその弟・千尋(中沢元紀)の産みの母。夫・清(二宮和也)の死後、嵩にとって伯父夫婦にあたる御免与町の柳井家に居候するが、教養が豊かで美しい容姿を持ち、勝ち気で利発な登美子は一際目を引く存在であった。
登美子は恋に生きる女性でもあったようで、御免与町に来てからしばらくすると高知市内の呉服屋の男性と再婚。だがその際、嵩は柳井家に託すことに。つまり、再婚相手のために子どもを置いて家を出ていったのだ。
このシーンを見たとき、ふと脳裏に浮かんだのは、2024年度前期に放送されたNHK連続テレビ小説『虎に翼』の梅子(平岩紙)だった。梅子は“良妻賢母”であろうと努め、夫との関係がうまくいかなくても、子どもたちのために、と奮闘していた。
この2作は時代背景としてはやや異なるものの、当時の女性像として一般的なのは梅子の姿だろう。そう考えると登美子は自分勝手な親にも見えるが、自らの気持ちに正直で、それを突き通す強い意志も持つさまは、一人の女性としてのカッコよさを感じる。
ただし、登美子のやっかいなところは嵩と一緒に暮らすことを自分からやめたのに、ことあるごとに“嵩の母親”として彼の人生に関わってこようとするところである。
2025.08.08(金)
文=久保田ひかる