現在放送中のNHK連続テレビ小説「あんぱん」で、北村匠海さん演じる柳井嵩の弟・千尋役を務め、その存在感に注目が集まっている中沢元紀さん。今回は、感動の“小倉の旅館シーン”の裏側やオーディションでのエピソードなど、撮影を振り返りながらたっぷりと語っていただきました。


「朝ドラ」は役者にとって夢のひとつ

――今回、千尋役が決まったときの感想を教えてください。

 マネージャーさんから電話で連絡をいただき、とても嬉しかったです。僕にとって「朝ドラ」は、学校に行く前に必ず見ていた「ゲゲゲの女房」(2010年)のイメージが強く、役者にとっての夢の舞台のひとつだとも思っていました。家族にもすぐに言えなかったこともあり、最初は実感がなかったのですが、日を追うごとにどんどん湧いてきました。家族に報告したときは、両親はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんもとても喜んでくれました。毎日2回、しっかり見てくれているそうです(笑)。

――オーディションでは喜怒哀楽を込めて、「アンパンマンのマーチ」の歌詞を朗読するという審査があったそうですね?

 監督さんやプロデューサーさんと色々な話をしながら面談したので、どのように「アンパンマンのマーチ」を朗読したかはハッキリ覚えていません。後で、プロデューサーさんが「喜びと怒りと悲しみを込めて朗読していた僕が、小倉の旅館で、嵩と最後の会話をする千尋の姿に重なった」と言ってくださいました。また、「自分の弱みや挫折のエピソードなど、すべてを包み隠さず、さらけ出してくれたことが良かった」とも聞いています。

――そのほか、オーディションでの思い出は?

 「アンパンマン」の好きなキャラクターとして、子どもの頃から、ずっと好きだったロールパンナちゃんの話をしました。マントに見立てた風呂敷を首に巻いて、リボンを付けた布団たたきで、お母さんと一緒に戦っていたんです。ロールパンナちゃんは妹のメロンパンナちゃんがピンチのときに現れ、助けた後に颯爽と帰る。そんなクールな感じや二面性があることに惹かれていました。「あんぱん」にはいろんなキャラクターのモデルとなる人物が出てくるので、それぞれのキャラの見方が変わりましたが、特にジャムおじさんの見方が変わりましたね。

2025.06.12(木)
文=くれい 響