この記事の連載

 ホラー業界の関係者も太鼓判を押している令和の大人気怪談語りチャンネル『禍話(まがばなし)』。生配信サービス「TwitCasting」で2016年から放送中のこの番組では、毎回、北九州の書店員である語り手・かぁなっきさんが集めた珠玉の怪談たちが惜しげも無く語られ、耳の肥えた怪談好きを震え上がらせています。

 そんな禍話から今回は1960年代を舞台に、従兄弟を亡くしたとある小学生が目撃したという“奇妙な赤い帽子の女”にまつわるお話をご紹介します――。(前後篇の後篇)

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Kくんの一周忌

 Kくんのお通夜から早1年が過ぎ、小学3年生になっていたNさん。

 ある日学校から帰宅して麦茶を飲んでいると、母親から「今週末Kくんのおウチに一周忌で集まるからね」と告げられました。

 ああ、そういえば去年Kくんが亡くなってお葬式に行ったんだっけ――すっかり忘れていたあの日のことを思い返していたNさんは、不意に浮かんだ疑問を母親に投げかけました。

「ねえ、そういえばKくんってなんで死んじゃったの?」

「……なんでもいいでしょ、そんなこと」

 夕飯の準備に取り掛かっていた母親は、背を向けてそっけなくそう返したそうです。

◆◆◆

 1年ぶりのKくんの家はあのときの雰囲気とだいぶ違って感じました。

 自分たち含めて真っ黒な喪服姿の親戚ばかりではありましたが、屋敷の中に吊り下げられていたあの白黒の垂れ幕や仰々しい祭壇も姿を消していたのです。

2025.08.10(日)
文=むくろ幽介