この記事の連載
『あれぇ、Kくんじゃないねぇ』

『探したんだよぉ』
まるで風に揺れるちり紙のような重さの感じられない足取りで女がゆらり、ゆらりと左右に揺れながら砂利道に歩き出していました。
ジャリ……。
砂利道の途中で突然立ち止まると、女が言いました。
『あれぇ、Kくんじゃないねぇ。まあ、おんなじかぁ~~』
そう言い終えると、女は突然こちらに駆け出しました。
「うわぁ!!」
Nさんは腰が抜けてしまい、四つん這いで必死に玄関扉を閉めましたが、鍵を閉め忘れていたせいで女はガラガラと扉を開けて中に入ってきたのです。その異様に高い背は頭をかがめないと扉をくぐれないほどでした。
「誰かぁ!! 助けてー!!」
Nさんが廊下を這いずるようにして台所に駆け込むと両親、そしてKくんのお母さんがブルブルと震えながら下を向いていました。
ビタッ……。
2025.08.10(日)
文=むくろ幽介