「なぜ私はこれまでこの人を素通りしていたのか」

 本当に不思議になるときがある。皆さんも経験があるのではなかろうか。全くノーチェックだったアーティストに、ある日突然「ぐぇっ!」と心を撃ち抜かれ、冒頭のセリフを自らに問い、首を傾げまくることが――。

 私はけっこうある。今回の「この人」とは、ちゃんみなとHANAである。紅白歌合戦のパフォーマンス、ヤバかった~(←ため息交じりの小声)。歌声に殴り倒された。まず「ROSE」を歌うHANAの7人一人ずつに、個性と歌唱力のアッパーカットを喰らう。立ち上がる間もなく次に登場したちゃんみなが「グーーッバディ! ユニークなこのお顔♪」と「NG」を唸り、魂にトルネード・パーンチ!! 最後に「SAD SONG」というツープラトンをかまされ、もう「NG」どころか「KO」である。ゴフッ。

 だから余計に自分が解せない。紅白以前にも、ちゃんみなのステージは何度も観ているのである。特に、「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」での「ハレンチ~KING~美人~WORK HARD」は、高所でフラフープみたいな輪に座って歌う彼女に「すごいな!」と思った。あの時点で、なぜ深堀りしなかったのか。

 理由は分かっている。すごすぎて怖かったからである。眉の薄いメイクも、100%どころか1200%くらい攻めてくる演出も、心をダム決壊のようにぶちまけるシャウトも! 紅白という年末の祭典のおかげで向き合うことができたのだ。

 いや、言い訳をしても「お前のNOは無意味」と言われるだけだ。よし、今からでも、ちゃんみながプロデュースし、HANA誕生のきっかけになったオーディション番組「No No Girls」(以下ノノガ)を見届けよう!


●50代にも刺さる金言だらけだった

 いざ見届ける前にリサーチしてみると、想像以上に紅白きっかけで沼に落ちた中高年は多いようだ。我らがCREA編集長(50代)も紅白でドハマりし、彼女たちの関連動画を見まくる日々だと漏れ聞いた。同世代の記事や感想ブログも続々ヒット、特にロケットニュース24の記事(「紅白の「ちゃんみな」と「HANA」に感動→周囲にオススメされて『No No Girls』を見始めてみた」ライター・P.K.サンジュン氏)は、執筆の手を止め、続編まで読んでしまった。

 気力体力の衰え、目肩腰の疲れが激しいアラフィフ勢を、ここまで釘付けにするノノガ、恐るべし――。リアルタイムで配信されたのが2024年10月4日から2025年1月24日。完全に後れを取ったが、私も紅白きっかけ仲間として観ねばなるまい、続きたい。いざいざ!

 結果からお伝えすると、いやもうびっくり。観ている私まで、肯定された気持ちになった。最初こそ「うまいわねすごいわね頑張れ!」と親戚のオバチャン目線だったのだが、次第に心はヤングに戻り、審査される側の気分に……。自分の成功体験の少なさから、落ちるメンバーにシンクロし、審査ごとに涙、涙。選ばなかった理由を一人一人にコメントする、ちゃんみなの言葉の威力が半端なく、自分まで励まされている気分になった。

「もっと強くなれるはずなの。逃げたいと思ったときこそ鏡を見て」

「自由にするためには、型にはまらなきゃならないこともある」

「誰の手も離さない」

 どないやねん、この説得力、褒める力、支える心よ(泣)! 自らのNO体験と重ね真摯に伝えるちゃんみなの包容力は、海どころか、銀河系レベル。彼女のプロフィールを見ると27歳と書いてある。私の半分しか生きてないの!?  2727歳の間違いではないか。でないと説明がつかない!

 特に自信のないSARAに言った、

「小さい頃から好きでやってきて、めちゃくちゃ努力して。その子に中指立てるのと同じなんだよね。その子泣いてると思うよ。こんなに頑張ったのに」

 そしてCHIKAに言った、あの伝説の

「いい加減にしろ。自信のない感じはもうここまでだよ。自分の過去に中指立てないでほしい」

という愛しかない叱咤は、自虐グセがある私にも響きまくった。50年以上ずっと下を向いていた私の「心の中の子ども」の頬を両手で挟み、やさしく上を向かせてくれた感(泣)。もう頑張ってきた自分に中指は立てないよ!

 そんな彼女のもとで成長する候補者たち。人生を懸け、全身全霊でパフォーマンスする姿はひたすら眩しい。我ながら意外だったのが、わが人生であまり縁がないタイプのASHAに肩入れしてしまったことである。カッコかわいいじゃないか。力の入れ方のコントロールや集団生活がとっても苦手そうなのに、夢に向かってちゃんと克服していく姿もエモい! 長く尖ったネイルが「私、頑張るからね」という自己主張の強い指切りげんまんに見えてくるほどだった。4次審査で落ちてしまったが、忘れられない。

 このように、ノノガは単なるオーディション番組ではなかった。NOと言われ続けてきた挑戦者を応援しているうちに、自分のコンプレックスとも向き合い、それを肯定し、前を向ける番組であった。

 最終選考で選ばれたCHIKA、NAOKO、JISOO、YURI、MOMOKA、KOHARU、MAHINAの7人は「HANA」として、2025年4月2日にメジャーデビュー。

 デビュー後も世の中から「NO」が降り注いだはず。それもまた養分に変えて、成長し、見事、紅白に出場。私のようにそっぽを向いていた中高年も夢中にさせたのだ。いやもう、改めて激アツである。

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