ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』で、杉咲花さんが演じる土田文菜の衣装は、放送直後にSNSを中心に大きな話題を集めています。スタイリングを担当した杉本学子さんに、今泉監督や杉咲さんと重ねた対話、そして文菜という人物を形づくるために大切にしたことについて伺いました。
一番意識しているのは……
――杉咲花さん演じる土田文菜が着ている服は、SNSを中心に「特定班」が出るほどとても話題になっています。どのようにこのスタイルになっていったのでしょうか?
『冬のなんかさ、春のなんかね』は、今泉力哉監督が脚本と演出の両方を手掛けていて、ドラマの中でも少し特殊な作り方をしている作品だと思います。普段であれば、キャストとスタイリストで、役の人物像を想像しながらどんな服を着るのか、一緒に作り上げていくことが多いのですが、今回は今泉監督の中ですでに出来上がっているイメージがあって。それをもとにみんなでディスカッションして、少しずつ形にしていくプロセスがありました。
そして、杉咲花さんは自分が演じる役柄にしっかりと向き合う方なんです。自分の思い描く文菜をスタッフに丁寧に共有してくださって、そのやりとりの中でキャラクターの解像度がどんどん高まっていきました。
――杉咲さんは文菜をどのような女性としてとらえているのでしょうか?
まず一番におっしゃっていたのは、「芯の強い女性」であるということです。自分の好きなものをきちんと選び取って身につけている、こだわりを持った人物だと。
それから、ディスカッションを重ねる中で共通認識になっていったのは、わかりやすくかわいらしい女性ではなく、まわりにこびない人物だ、という点でした。
私としては、文菜は古着屋でアルバイトをしていますが、古着屋を本業にしたいと思っているわけではない、ということは大切にしていました。あくまでも彼女の軸は小説家であるということ。なので、古着だけでスタイリングを完結させるのではなく、新しい服と古着をミックスすることを意識しています。
――まわりにこびない女性が着る服として、日本発のブランドとしてとても人気がある「AURALEE」や「COMOLI」、「HYKE」を選んだのはなぜですか?
ユニセックスで着られるアイテムが多い、というのは大きな理由のひとつです。文菜には、女性らしさに限定されない魅力を持っていてほしかったですし、男性から見ても自然に「素敵だな」と感じてもらえるような服を着てほしいと思っていました。それから、古着とミックスしやすいんです。いい意味で強い主張がなく、古着とも自然になじんでくれる。そうしたバランス感も魅力でした。
文菜という人物を作るにあたって、下着も大切な要素。こだわりを持った女性が身につけるものとして、「DEPT」のキャミソールなどを選びました。モードな雰囲気も出るので、彼女にぴったりだなと思っています。
ただ、見た目の印象だけで選んで、文菜の暮らしとかけ離れたブランドを取り入れることはしないように心がけています。たとえば「HYKE」のダウンジャケットは決して安いものではありませんが、文菜の収入で手が届かないものではないと思っています。作品の印税で自分へのご褒美として買ったのかもしれないですし、リセールショップで見つけたのかもしれない。ドラマの中では描かれていませんが、そうした背景を想像していただけたら嬉しいです。
――杉咲さんとディスカッションを重ねていく中で、気付かされた点はありますか?
杉咲さんは、サイズ感をとても大切にされていました。杉咲さんご自身が小柄な方なので、オーバーサイズのアイテムを着る際にも、だらしなく見えすぎないように、きちんと雰囲気を保ちたいとおっしゃっていて。
私も普段からサイズ感は意識していますが、今回はとくに何度も試着を重ねながら決めていきました。一見すると文菜には少し大きすぎるように見えるものも、実は細かく計算されたバランスになっています。
当初から古着をミックスするスタイルで進めていましたが、監督や杉咲さんと話し合う中で、よりメンズライクな方向へと深まっていった印象があります。基本的に、どんな人と会うときもメンズライクな装いをしていますが、岡山天音さん演じる小太郎と会うシーンでは、よりカジュアルな雰囲気になっています(笑)。そうした違いにも注目していただけたら嬉しいです。
