この記事の連載
- 杉咲花さんインタビュー・前篇
- 杉咲花さんインタビュー・後篇
杉咲花さんは、百戦錬磨の俳優・井浦新さんをもってして「なぜこんな表現ができてしまうのかな、怖いな(略)俳優さんの中で化け物っているんですけど、間違いなくその部類にいる人」といわしめた。弱冠26歳で、朝ドラから映画、CMに数多く出演し作品ジャンルも幅広い。役柄を自分のものにする才能、その演技力の高さは誰もが知るところだろう。
杉咲さんが井浦さんとともに挑む最新作は、カンテレ・フジテレビ系新月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。記憶障害の脳外科医という主人公・川内ミヤビを演じる。目の前の患者を全力で救い、自分自身も再生していくという、新たな医療ヒューマンドラマが幕を開ける。
インタビューが行われたのは撮影前のことだったが、杉咲さんはやる気と希望に満ちた眼差しで、作品に捧げる愛情を惜しみなく語ってくれた。
「プロデューサーの姿勢に突き動かされた」
――ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』にて、杉咲さんは主人公の“記憶障害の脳外科医”川内ミヤビを演じます。出演が決まったときは、どのようなことを感じましたか?
最初、企画の段階で米田(考)プロデューサーにお声がけいただいたときに、今はSNSも含めてたくさんのエンターテインメントにあふれているけれど「テレビドラマというものを通して、見たことのないような新しいものを作っていきたい」というお話をうかがったんです。その姿勢に突き動かされたところがあり、「この方と組んでついていきたい」と直感的に思いました。私にとっては、それがこのドラマの出発点だったので「やるぞ!」という気持ちになり、すごく気合いが入った感じでした。
――ミヤビという人物に関しては、どのような印象を受けましたか?
ミヤビは、自分が記憶障害であるという恐怖を毎朝突きつけられるんですよね。今の自分には想像し得ないような絶望もあるんじゃないか、と感じています。それでいて、患者さんやお医者さんに対しては気丈に、軽やかでいようとする人。相手が医者であっても、患者であっても、たまたますれ違った人であったとしても、とにかく目の前にいる人に向き合う思いの深度みたいなものが、とても深い人なんじゃないかな、と感じています。ミヤビにしかできない患者との関わり方をしていく姿は、とても人間味があって格好いいなと思うんです。一人の人間と人間として向き合おうとする姿がすごく魅力的なんですよね。
……ただ撮影はこれから始まるので(笑)、アプローチに関してはまだ探っている段階です。
――台本を読んでいて、ほかに魅力的に感じたところはありますか?
やっぱり患者が救われて終わりではなくて、その先のそこに関わった人たちの人生に思いを馳せることができるところじゃないかなと思います。登場するそれぞれの人物に、受け手の皆さんが自分の姿を投影することのできるような作品になるんじゃないかな、と期待しているんです。
医療は私たちの生活にとって欠かせないもの、間違いなく誰かの役に立つ仕事ですよね。私自身、医療者に対してこれまでの人生でお世話になってきましたし、すごく憧れもありました。そんな人たちも誰かを救いながら、自分も救われたいと思う瞬間があるわけなので、医者たちも生活者であるということも伝えられるような作品になったらいいなと思います。
2024.04.13(土)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=吉田 達哉
ヘアメイク=宮本 愛(yosine.)