CREAが取材してきた数多の温泉宿から、ひとりに優しい魅力ある温泉宿をセレクト。いつか訪れたい憧れの宿、再訪したい思い出の宿、絶景を楽しむサウナも併せてご紹介。
名湯の地の連綿と受け継がれてきた風格ある空間で湯浴みも食事も睡眠も、さらには設えや庭を愛でるのも、ひとりなら心静か。これ以上の贅沢はありません。
色あせることのない名建築に泊まる
●大正屋[佐賀・嬉野温泉]
「優れた建築には“心地よい驚き”がある」。生前、そんな言葉を残した建築家の吉村順三が設計を手がけた「大正屋」は、大正14年に7部屋だけの小さな旅館として開業。その後、1974年から15年以上にわたって吉村が増改築に関わり、日本を代表する名宿へと成長を遂げた。
京都の「俵屋旅館」や「文珠荘」といった和風旅館の設計も手がけた吉村にとって、いわば「大正屋」は集大成。その世界観を堪能するなら、ひとりきりで泊まり、じっくりと建築に向き合うのも贅沢の極みだろう。
吉村建築の特徴は、決して主張せず、感覚的な心地よさを追求している点。例えば、大きな窓に対して華奢な窓枠は、眺めを邪魔しないためのもの。障子は外枠と内側の組子の寸法を同じにすることで、閉めた時1枚の障子に見えるデザインに。違和感のない空間では、ストレスなく過ごせる。
また、インテリアには佐賀の伝統工芸品、料理には有田焼の器を使うなど、上質なものに触れる時間も心の栄養になっていく。
中でも傑作は、本館地下の大浴場「滝の湯」。内湯に浸かり、大きな窓越しに滝が流れる庭園を眺めると、内湯と同じ高さに池が広がり、露天風呂にいるかのような錯覚を覚える。
「吉村先生のすばらしい建築に、目と心が行き届いたおもてなしが加わって初めて“大正屋”になります」
そう話すのは、専務の山口雅子さん。その言葉どおり、格式の高い旅館ながらどこかアットホームな雰囲気で、付かず離れずの距離感もひとり客にはちょうどいい。
ベストセラーではなく、ロングセラーを志す地道で謙虚な姿勢こそ、長年愛され続ける理由なのかもしれない。
大正屋
所在地 佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙2276-1
電話番号 0954-42-1170
ひとり料金 1泊2食付き 32,000円~
ひとり対応 繁忙期を除く通年可
●JR嬉野温泉駅下車、宿泊の方のみ送迎あり(要予約)
※掲載されてる情報は、2025年12月現在のもので、諸事情により変わる場合もあります。今号に掲載した各施設、店舗などの情報は通常営業時のものです。実際の運営・営業状況については、ホームページなどをご参照いただくか直接お問い合わせください。お出かけの際には、政府・各自治体などから出ている要請措置、注意喚起をご確認ください。
※価格は表示がなければ、消費税込み(標準税率10%もしくは軽減税率8%)です。施設によりサービス料、入湯税など別途加算される場合があります。
続きはCREA Due「楽しいひとり温泉。2026」でお読みいただけます。

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
