スリランカがかつて“セイロン(ライオンの島)”と呼ばれていた頃から、紅茶はこの国の代名詞であった。
今回はスリランカ最初のティーカンパニー「ディルマ」の案内で、そんなセイロンティーのおいしさを探る旅へ出かけた。
神様がくれた赤い大地で育まれるセイロンティー
旅の初日。目指したのはスリランカ一の高地・ヌワラエリヤにある標高約1700メートルの茶畑「ラバーズリープ茶園」だ。コロンボから水上飛行機で30分。小さな村の湖畔に降り立ち、車でさらに1時間半かけてたどり着く山中にある。
コロンボの蒸し暑さとはまるで違う冷たい空気が心地よい。ヌワラエリヤはかつてポルトガルやオランダの軍が攻めあぐねたという山岳地帯だ。この場所はスリランカでも最高品質の紅茶が生まれる場所でもある。
“ラバーズ・リープ”の名の由来となった滝のそばの畑まで行くと、細い山道から畑にかけて延々と続く赤い土が目に入る。これこそが「神様がつくった土」というセイロンティーの母だ。
そしてこの冷涼な気候がヌワラエリヤの紅茶の父。赤い大地の養分と太陽の光を浴びて育った茶葉は、高地独特の冷涼な気候の中でゆっくりと発酵し、花のような香りのある金色の紅茶が生まれるのだ。
続いて訪れた茶畑「サマーセット茶園」は、ディンブラ地域の中でも標高約1200メートルとやや低い地域だ。ヌワラエリアから少し下っただけで、空気の温度が変わる。
この地の紅茶はしっかりと発酵がすすんだバランスのよい渋みと香りがある味わいだ。ここではティーマイスターが茶葉のスタイルによる風味の違いを教えてくれた。
同じ葉でも細かくカットしたものは色も味も濃く出る。味わってみると、先ほどのヌワラエリヤの紅茶とはまったく違う厚みのある味だ。スリランカには7つの紅茶の主要産地があり、標高差や土壌の違いでそれぞれ味わいが大きく異なるのだという。
この日の宿はかつて紅茶で財を成したイギリス人の邸宅をホテルとして蘇らせた「セイロン・ティー・トレイルズ」。紅茶の歴史が刻まれた空間だ。先日のミシュランキーでも3キーを獲得したラグジュアリーホテルで、食事や飲み物などオールインクルーシブ。
まるで執事のようなバトラーサービスも往時を彷彿とさせる。部屋に用意された豊富な紅茶のメニューから訪れたヌワラエリヤの紅茶を選び、外のテラスでゆっくりと飲んでみた。
「紅茶は“自然の指紋”。紅茶を飲むということは日々刻まれる自然の痕跡を味わうことなんです」と話してくれたティーマイスターの顔が浮かぶ。セイロンティーにはその一滴に土地の物語が確かにある。
紅茶の旅とともに体験したい大自然を望むホテルへ
北海道よりも小さいスリランカ。その小さな国土に急峻な山や森、平地に乾燥地帯、海と多様な気候風土があることが、バラエティ豊かな紅茶の味わいに繋がっている。
スリランカの多様さや奥深さを知るなら、さらに足を延ばして草原や、海のダイナミックさを体験する旅もおすすめ。ここではディルマが運営する2軒のホテルを紹介する。
象やレオパードに会える「Wild Coast Tented Lodge」
スリランカの南東にあるヤーラ国立公園に隣接するラグジュアリーなテントロッジ。猿やうさぎが遊びにくる大自然の中にあるがコクーン型の客室は洗練されたインテリアで心地よい。ここではサファリツアーにぜひ参加を。レオパードや象、ワニやたくさんの鳥に会うことができる。
美しいインド洋を一望「Cape Weligama」
スリランカ南部、ウェリガマの高台にあるラグジュアリービーチリゾート。全42室の客室は、130メートル以上という贅沢な造り。ディルマの紅茶と合わせたアフタヌーンティー、朝食、夕食などすべてがオールインクルーシブ。ダイニングからの刻々と表情を変える海景は見飽きない。
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ワルツ
CREA 2026年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
