お笑い芸人として第一線を走り続けてきたゆりやんレトリィバァさんが、映画『禍禍女』で映画監督に初挑戦。長年憧れ続けてきた映画への思い、撮影現場で直面した葛藤、そして自身の恋愛体験を物語へと昇華させていった過程を、ユーモアを交えながら率直に語ってくれました。
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映画づくりは自分との戦い。ほんまにしんどい
――念願の映画作り。初めて監督に挑戦してみて、率直にいかがでしたか?
最初から最後までみっちりと映画作りをさせてもらって、正直しんどいこともたくさんありました。そんな泣き言を言ってる時間もないくらい大変でしたが、終わってみるとやっぱり楽しかったですね。一つ一つのシーンが出来上がっていくのは感動的でした。
――その「しんどさ」は、どんなところにあったのでしょうか。
撮影は連日ハードなので忙しいし、疲れもありましたが、チームのみなさんに「自分はやっぱりこれをしたいです」とか、「ここを変えてみたいです」と意見を言うのにとても勇気が必要でした。でも、意見を言うのはなんとかクリアできたかも。
それより大変だったのは、自分は本当はどんなものが好きで、どんなシーンを撮りたいのかをじっくり考えて判断しなきゃいけないことですね。自分との戦いが、ほんまにしんどい。自分のやりたいことをきちんとつかめてからは、編集室にこもって相談しながら作業したり、撮影の休憩中に「あれ、どうやった?」って話したりする時間が、まるで学生に戻ったみたいで楽しくて、嬉しい時間でした。
――学生時代は映画研究をされていたんですよね。
そうそう。ハーバード大学で。
――え、ハーバード?
間違えました。関西大学です。校風がそっくりなのでつい間違えちゃいました。ごめんなさい。小さい頃から映画を見るのが好きで、子どもの頃は映画の世界で働きたいって夢見てました。
――今回、ホラーというジャンルを選ばれた理由も気になります。
もともとホラー映画が好きで、撮るなら絶対ホラーがいいと思ってたんです。でも、自分が熱を持って話せることじゃないと映画なんて作れないじゃないですか。ネタ作りもそうですが、周りの人がやんややんや言ってきても、自信をもって話せるような軸がないと広がっていかない。
だからプロデューサーさんには恋バナをずっとしてたんです。恋愛は自分の経験したことだから熱をこめて語れるので。そしたら「それ、ホラーですね」って言われて。「ほな、ちょうどええわ」って、大好きなホラーと自分が熱く語れる恋愛が合わさって、『禍禍女』の話になっていきました。
――過去の恋愛話が、ホラーに結びついていったんですね。作中には男性が登場しますが、製作中に昔の恋を思い出して悲しくなったり、腹が立ったりすることはなかったですか?
ストーリーを考えているときは、「自分に振り向いてくれないなんて、おかしいやろ。おかしいに決まってる」って怒りを抱えてて。「私を振ったことがどれだけ間違っていたか、この映画で思い知らせてやる」って意気込んでたんです。
でも完成したものを見たら、間違ってたのは私だったのかもって気づきました。「そりゃ、あんなことしていたら冷たくもなるよな。もっと私にもできたことがあったんちゃうか」と思えるようになったんです。
――物語に昇華したことで、過去の恋愛と少し距離がとれたのでしょうか?
そうかもしれないですね。恋愛って言っても何年も付き合って関係を深めていったとかではなく、私の片思いばかりなんです。それを恋愛と呼んでいるだけで。
