自分の嫌いなところや、過去の消したい記憶。それらを「隠すべき欠点」ではなく、自分を輝かせるための「最強の武器」に変えることができたなら――。
芸人として、そして映画監督として新たな一歩を踏み出したゆりやんレトリィバァさんと、美のカリスマとして圧倒的な支持を集めるヘア&メイクアップアーティストの小田切ヒロさん。3月6日発売の『CREA』2026年春号で、そんなお二人の熱い対談が実現しました。
ゆりやんレトリィバァさんの初監督映画『禍禍女』に小田切さんが深く共鳴した理由や、二人が共通して持つ「ただでは転ばない」という力強い人生訓など、読めば心がパッと晴れるような言葉が次々と飛び出た90分。『CREA』の発売に先駆けて、お二人の濃密なトークを少しだけお届けします!
なお、3月6日発売の『CREA 2026年春号』では、本記事でも触れられている小田切さんの「コンプレックスとの向き合い方」や「メイクの魔法」について、さらにディープなインタビューを掲載しています。自分自身を愛し、人生の主導権を握り直すヒントがきっと見つかるはず。過去の傷を「美味しそうな材料」に変えてきた、二人のトークをぜひお楽しみください!

CREA 2026年春号 ご予約はこちら
定価 980円(税込)
文藝春秋
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「観ていてちょっと他人事じゃないと思った」
――ゆりやんレトリィバァさんの初監督映画『禍禍女』を、小田切さんはご覧になっていかがでしたか?
小田切ヒロ(以下、小田切):もちろん拝見しました。観ていてちょっと他人事じゃないというか……。誰しも、本能として制御できないクレイジーな部分って、特に若い頃は持っていると思うんです。私にもありましたしね。だから、主人公を単に「クレイジーな人」とは思いませんでした。「こういう時ってあるよね」という共感と、あとは劇中で「ヒロシ」という名前が何度も出てくるので、聞いているうちに「私かな?」ってちょっと怖くなっちゃったりして(笑)。
――主人公が執着する相手の名前が「ヒロシ」ですもんね。
小田切:そう、名前が似ているからつい反応しちゃって(笑)。でも、人が持っている「こじれた部分」や「突出した強烈さ」を、私は決して悪いものだとは思いませんでした。この映画の中の状態だけを見れば「やばいやつ」かもしれません。けれど、このエネルギーがいつか生かされる時が絶対に来るんじゃないかなって、ちょっと年上目線で見守るような気持ちで観ていました。
ゆりやんレトリィバァ(以下、ゆりやん):本当にありがとうございます。これ、ほぼドキュメンタリーなんです。
小田切:だからこそ、魅力的だと思うんです。魅力的な人っていうのは、経験値からつくられるもの。それを掘り下げた時に、この映画はすごく分かりやすいプロセスを見せてくれています。ネガティブな意味での「クレイジー」ではなく、大人になる過程で必要な一歩だったんだと。同じような思いを抱えている人たちにとっても、人生を重ねる勇気をもらえる作品になっていると感じました。
ゆりやん:すごく嬉しいです。今日、小田切さんのメイクのお話を聞いていて(詳しくは3月6日発売のCREA2026年春号で!)感動したのが、コンプレックスとの向き合い方なんです。もともとこの映画は、好きだった人に振られた悔しさから「どれだけあんたが私を振ったことが間違っていたか教えてやる!」という復讐心でつくりました。でも、出来上がった作品を客観的に観てみたら、「間違っていたのは私のほうだった」って気づかされて(笑)。小田切さんはメイクのプロセスとして話してくれてましたけど、同じだなと思って感動しました!
――制作の過程で、ゆりやんさんの心境にも変化があったんですね。
ゆりやん:はい。自分の嫌なところ、コンプレックスだと思っている部分って、実は試行錯誤を繰り返す中で「武器」に変わる可能性がある。だから、嫌な経験をただでは終わらせない。コンプレックスになるほど嫌な思いや経験をしたなら、それを自分のいいところに変換してやればいいんだって気がつきました。
小田切:本当にその通り! 映画にできない人は、メイクで復讐すればいいのよ! 私、座右の銘がいくつかあるんですけど、一つは「ただでは転ばない」。これは絶対に心に留めている言葉です。人生、いろんなことが起きます。傷つくことも、引きこもりたくなるようなつらいこともあって、ネガティブになってしまう経験は私にもありました。でも、負った傷を隠すんじゃなくて、全部生かして武器にする。絶対にただでは転ばないぞって思うんです。今の私の原動力は、かつての傷を思い出して、自分を奮い立たせることで生まれているんです。だから、今ネガティブな状況にいる方は、それを変えるチャンスだと思ってほしいですね。
ゆりやん:「傷があって良かった」なんて、その渦中では絶対に言えないことだけど、結局今なら言えますよね。
小田切:もし傷がなかったら、もっと平凡で、楽な方へ流れる人生だったと思います。ぼーっとゆるく生きられた。でも、過去の傷は変えられないけれど、それをどう未来の「味」に変えていくか。表現者にとって、それは素晴らしい材料になりますから。
