この記事の連載
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや沖縄」前篇
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや沖縄」後篇
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや竹富島」前...
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや竹富島」後...

沖縄・竹富島の伝統を踏襲した集落景観での滞在に加え、島の魅力を活かした体験が待つ「星のや竹富島」を、内田也哉子さんが訪ねました。伝統的な木造帆船で海を走り、水牛車で集落をめぐるアクティビティは、厳しくも美しい島の自然や、島に生きる人々の世界観に触れる体験でもありました。
木造帆船サバニに乗り込み青く透明な海へ

沖縄伝統の木造帆船「サバニ」を2時間貸し切るアクティビティ「海を駆ける 島風プライベートサバニ」(大人1人10,650円。通常は2名から受付)。
「サバニ」は風向きや太陽の位置を頼りに櫂だけで操る、シンプルな帆船です。かつては物資輸送や漁、交通手段として使われ、島の暮らしには欠かせない船でしたが、戦後はエンジン付きの船がメインとなり、徐々に廃れていきました。

船を操るガイドの上勢頭輝(うえせど・あきら)さんは、一度は途絶えた竹富島のサバニの復興に尽力した方。自身は本物のサバニを知らない世代です。
「サバニは島の人たちが受け継いできた海洋文化そのもの。自分はおじいたちの話を聞いて憧れたけれど、子どもたちはその存在さえ知らないから、おじいたちが生きてるうちに作ろうぜって。たとえいまの文明社会が滅んだとしても、サバニに乗って魚を取りにいけるもんね」(上勢頭さん)
サバニを走らせるエリアは、石垣島と西表島の間に広がる国内最大のサンゴ礁帯「石西礁湖(せきせいしょうこ)。サンゴ礁が天然の防波堤となり、遠浅で透明度が高く穏やかな、まさに湖のような海域です。


「プライベートサバニ」のコースは、相談次第(気象条件にもよりますが)。できるだけ遠くまで行ってみたい、海中に浮かぶ“幻の浜”に上陸したい、最高にバエる撮影スポットに連れて行ってほしい……等々。もちろん、その日ならではのおすすめコースも提案してくれます。

サバニでしか見られない景色がそこにある
この日のスタートは“星砂の浜”ともよばれるカイジ浜から(その日の風や潮位によって別の浜から乗船することも)。比較的潮の流れが早いため遊泳はできないそうですが、この日の海はとても穏やかでした。
「乗り物酔いしやすいタイプなので最初は少し心配だったのですが、杞憂でした。海風が心地よく、沖の方へ進めば、360度見渡す限りのエメラルドグリーンの海。竹富の海の本当の美しさに出合えます」と、也哉子さんもサバニがすっかり気に入ったよう。
「世界のいろいろな地域で美しい海を見てきましたが、石西礁湖の波が織りなす彩の繊細さ、透明度の高さは別格ですね。誇張するわけではありませんが、これまで見たことのない美しさで、とても癒されました」

「ガイドさんのお話も楽しく、心に残りました。山や川がなく水資源も乏しい竹富島の人たちは、サバニで西表島などに渡って稲作を行ったり、危険なサメ漁に出ていたのだとか。そうした苦労も詰まったサバニを若い人たちが復興し、先人の知恵を受け継いで、新しいサバニの時代を紡いでいくというのは、素晴らしいことですよね。
島人にとって、海を守ることは命を守ること。だから海辺の開発は原則としてできないことになっているのだそうです。思えば『星のや竹富島』もオーシャンビューではありませんが、海とともに生きる島の人々やその文化に敬意を払うことが、居心地のよさにつながっているように思います」

「ガイドさんの『今度は、お昼寝しにきてください』という言葉にも、ぐっときてしまいました。島の人でないと出てこない言葉だなって。リゾートでは何もしないのが最高の贅沢ではありますが、こんな風に地元の人や文化と触れ合えるなら、アクティブになるのもいいと思えました」
2025.02.22(土)
文=伊藤由起
写真=橋本 篤
写真協力=星のや
ヘアメイク=布施綾子
協力=星野リゾート