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 サンゴ礁が隆起してできた竹富島は自然の資源が乏しく、人々は生きるための知恵を出し合い、協力する「ウツグミ」の精神で暮らしを営んできました。その中で育まれた文化や環境の豊かさを次の世代に渡すため、「星のや竹富島」でもさまざまな取り組みが行われています。


畑文化や農作物を継承するためのプロジェクト

 「星のや竹富島」が推進する「畑プロジェクト」は、竹富島特有の畑文化や農作物の継承を目的とする活動です。観光が主要産業となって久しい竹富島では、農業にまつわる文化や島ならではの農作物の継承が途絶えつつありました。

 そこで「星のや竹富島」では、2017年から施設内に畑をつくり、島内唯一(!)の農業従事者の長老に学びながら伝統的な作物の栽培を開始。

 最初は石灰岩だらけの土壌を耕すだけでひと苦労だったそうですが、現在では、かつて無医村だった島の人々の命を救ってきた野菜やハーブ、芋、粟、在来種の大豆なども徐々に収穫できるようになってきたそう。現在では、栽培に興味を示してくれる島民も増えつつあり、若手有志がそれぞれの畑を始めているといいます。

 2024年には、施設内の畑で収穫した命草からつくる蒸留酒「KUNUSHINA」をリリース。その名称は、特に薬効が高いとされる9種類の命草「九品薬(クヌシナヒスル)」から着想。ピーヤシ(島胡椒)、グアバ、月桃などの7つの命草に加え、沖縄産のタンカン、波照間島の黒糖の9品をブレンドした、香り高いオリジナルスピリッツになりました。

 一方、プロジェクト当初から栽培を試みた粟は、600年の歴史がある島最大の祭事「種子取祭(たなどぅい)」で、神様に捧げる特別な作物。

 離島の厳しい環境下で人々が暮らしてきた竹富島は、五穀豊穣や子孫繁栄を祈願する儀式や伝統を大切にしていますが、とりわけ「種子取祭」の約10日間は、島を離れた人もこぞって里帰りをし、皆で協力して準備や練習を行う特別な期間です。

 「星のや竹富島」でも毎年この時期は、種子取祭を知り竹富の魂に触れるプログラムや特別な食事を用意しているので、興味のある方はぜひ、今年の開催期間を狙って訪れてみてください。

2025.02.22(土)
文=伊藤由起
写真=橋本 篤
写真協力=星のや
協力=星野リゾート