この記事の連載
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや沖縄」前篇
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや沖縄」後篇
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや竹富島」前...
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや竹富島」後...
島人が大切にしてきた暮らしがここにある

「星のや竹富島」の約2万坪の敷地には、島内の家々と同じように「竹富島景観形成マニュアル」に従い、伝統を尊重して建てた戶建の客室が点在。開業から12年が過ぎたいま、石垣や赤瓦、木々も周囲の自然にすっかりなじんでいます。
全48棟の客室はすべて南向きで、幸せを運ぶとされる南風(パイカジ)が通るつくり。琉球赤瓦の屋根の上からは、1棟1棟異なった表情のシーサーが見守ります。敷地入口正面の「ヒンプン」と呼ばれる壁は、風通しとプライバシー確保が目的ですが、魔除けの意味もあるのだとか。


客室正面には色鮮やかな花や樹木、裏手には風よけになるフクギを配置。これも既存の集落と同様に、伝統美と実用性を兼ね備えた景観形成マニュアルに沿ったものです。また、ホウキ目が美しい白砂の道は、毎朝スタッフが竹ボウキで清めているのだそう。



その集落景観の第一印象を「八重山の原風景でありながら、100年先の未来に残るのはこうした風景ではないかと思わせる」と表していた也哉子さん。
「島のしきたりでは、家に入る際はヒンプンの左側を通るので(右側は神様が通るとされる)、客室の入口もまた左側にあると聞きました。室内は素朴ながらも清浄な空気が漂っていて、日々の暮らしのなかに祈りがある、自然に対して謙虚な島人の暮らしに思いを馳せながら過ごしました」
島の天地人が織りなすディナー「島テロワール」

ディナーは、島の天・地・人が織りなす美食コース「島テロワール」を(1人18,150円・宿泊別)。島の食文化とフレンチをかけ合わせた「星のや竹富島」自慢のコースが、この冬さらに深化しました。
竹富島を含む八重山地方の冬は平均気温18度前後と過ごしやすく、旬を迎える食材も多数。今回のコースでは、全国の一流レストランでも珍重されている車海老や、島の生活を支えてきた大豆、芋類などを加えた料理が登場します。
さらに、施設内の畑で育てた命草(ぬちぐさ=薬草)から作られた蒸留酒「KUNUSHINA」や、昔は島の各家庭で作られていたという島醤油をアクセントや隠し味に使った一品も。島に受け継がれてきた文化を新たな発想で捉え直した、ここにしかないローカルガストロノミーを堪能できます。


例えば「車エビのマリネ KUNUSHINAの香り」とあるメニューは、島の西側の美しい海で育つ極上の車エビを、命草のスピリッツと島醤油でマリネ。卵黄とマスタードにタンカン(柑橘の一種)を加えたソースと、エビ出汁のジュレを添えた一品です。仕上げに「KUNUSHINA」でフランベをすることで、その爽やかな香りと甘みの強い車エビを堪能できます。
肉料理は2種類(牛、豚)からのチョイス。琉球の宮廷料理「ミヌダル」をフレンチの技法で昇華させた一品「豚肩ロースの炭火焼 黒ごまの香り」は、黒ごまと黒糖のラブ(ミックススパイス)を豚肉にまとわせ、炭火でじっくりと焼き上げることで、香ばしい風味と深いコクを引き出しています。
「豚の鳴き声以外はすべて食べる」といわれる沖縄の食文化に倣い、ソースにも肉や豚骨を使用し旨味をたっぷりと抽出。素材を無駄にせず、全てを余すことなく活かした奥行きのある味わいです。

「オーセンティックなフレンチに、この時期の島ならではの食材がふんだんに散りばめられたコースは、確かな美味しさと新鮮な驚きに満ちていました。こうしたレストランのシェフやサービスの方はもちろん、畑で伝統作物を栽培したり、伝統文化を学ぶスタッフの島を愛する思いに、心を打たれることもたびたび。
リゾートでありながら、島の歴史や文化、人々の暮らしが身近に感じられる滞在は、忘れられない思い出となりました。次は家族と一緒に少し長めに滞在して、島民の方々との交流をもっと楽しめたらと思っています」

「その瞬間の特等席へ。」をコンセプトに、各施設が独創的なテーマで圧倒的非日常を提供する「星のや」。サンゴ礁が隆起してできた周囲9キロほどの竹富島にある「星のや竹富島」では、島の基本精神にのっとった「ウツグミ(一致協力)の島に楽土」をテーマに、伝統的な集落景観での滞在と、島の歴史や文化に沿った多彩な体験を提供しています。
後篇では、「ウツグミ」の精神にのっとった取り組みや文化体験を深堀りしていきます。
内田也哉子(うちだ・ややこ)
1976年東京生まれ、東京・ニューヨーク・ジュネーブ・パリで学ぶ。文章家。エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションのほか、音楽ユニットsighboatでも活動。2024年6月、長野県上田市にある戦没画学生慰霊美術館「無言館」共同館主に就任。著書に『ペーパームービー新装版』(朝日出版社)、『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(週刊文春WOMANの連載を収録)などがある。週刊文春WOMANで『mirror river』を連載中。
星のや竹富島
所在地 沖縄県八重山郡竹富町竹富1955
電話番号 050-3134-8091(星のや総合予約)
宿泊料金
◆1泊147,000円~(1室あたり、税・サ込み、食事別 ※通常は2泊から受付)
客室数 48室
チェックイン 15:00/チェックアウト 12:00
アクセス 石垣港よりフェリーで約10分、竹富港より送迎あり
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyataketomijima/
◆Wi-Fiあり

2025.02.22(土)
文=伊藤由起
写真=橋本 篤
写真協力=星のや
ヘアメイク=布施綾子
協力=星野リゾート