この記事の連載
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや沖縄」前篇
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや沖縄」後篇
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや竹富島」前...
「その瞬間の特等席へ【星のや】を巡る旅」~「星のや竹富島」後...
伝統的な小空間で琉球舞踊を鑑賞

夜の帳が下りるころ、いよいよ歓待の宴が始まります。宿泊部屋とは別に用意された特別な客室で、くつろぎながら宮廷料理やお酒を楽しみ、琉球の古典音楽・舞踊を間近で鑑賞する、「うとぅいむち滞在」のメインイベントです。


そもそも琉球の古典音楽・舞踊は、首里城やその界隈のクローズドな空間で、士族階級や賓客のためだけに披露されていた宮廷芸能。「うとぅいむち滞在」ではそのスタイルにのっとり、美しい紅型(沖縄の染め物)をバックに、1組限定で披露されます。
まず舞台に登場するのは、士族の正装を身に着けた男性演者。柔らかく波打つような三線の響きに、朗々とした歌声が重なります。気品と哀愁、長い余韻が折り重なる古典音楽の世界に、也哉子さんも一気に引き込まれた様子。

「ゆったりとした力強い歌声が体の芯の部分に届く、稀有な体験でした。マントラにも似た響きに身を委ねていると、幽玄に誘われるというか、瞑想にも似た状態になりますね。琉球の古典音楽は、神様に奉納する芸能でもあったと聞き、腑に落ちました」
お次は、華やかな紅型の着物をまとった女性演者が登場。歌三線にのって古典舞踊を披露します。両手の中指には銀製の「房指輪」をつけ、足元は赤足袋。手踊りの舞や、小道具の糸巻き(かせ・わく)を使う舞に見られる優雅な動きは、まさに琉球の美の象徴。


「これほど間近で鑑賞していると、踊り手の目線や指先の豊かな表情もよく見えますね。演者のおふたりの凛とした佇まいに、こちらまで背筋が伸びるようでした。宴の終わりに少しお話を聞けたのですが、琉球言葉の歌の内容や、衣装やアクセサリーなどの意味を知ると、より楽しみが広がります。
例えば女性の衣装は、踊りの内容や登場人物の役割、心情、年齢などを視覚的に伝える役割があるそう。まだ年若い乙女ならピンクなどの華やかな色、成熟した女性になるほど、黄、ブルー、グレーといった、濃くくすんだ色合いの衣装をまとうのだとか。
この日披露された古典舞踊「かせかけ」は、『愛しい人のために、トンボの羽のように薄く上質な布を織って差しあげたい』という乙女心を表現した踊り。華やかで愛らしい衣装がよく似合っていました」

2025.02.15(土)
文=伊藤由起
写真=橋本 篤
写真協力=星のや
ヘアメイク=布施綾子
協力=星野リゾート