「新潟ガストロノミー」を訪ね、春夏秋冬のフルコースをご紹介してきたシリーズ。今回は、「Redefine Luxury」をテーマに掲げる施設「里山十帖」にスポットをあてて、体験できることを覗いてみました。


絶景と温泉と里山グルメ、南魚沼の贅を尽くしたおもてなし

 新潟県は大沢山温泉。魚沼の地で自遊人がプロデュースする「里山十帖」は、四季折々の「里山の物語」を心ゆくまで楽しめる宿です。なかでも絶景露天風呂、そして新潟の風土と文化に寄り添いながら山菜や伝統野菜を中心に供される食事が人気を集めています。

 入り口の重厚な扉が開くと、彫刻家・大平龍一さんによるアート作品「ふくこづち(福小槌)」がお出迎え。見上げると10メートルもの高さを誇る吹き抜けの天井が。

 築150年の古民家をリノベーションした「里山十帖」。一歩足を踏み入れた瞬間から、別世界が広がっていきます。総ケヤキに総漆塗りの日本の伝統建築でありながら、随所に北欧デザインの要素を取り入れ、気取らないミニマリズムといった日本と北欧の共通点をうまく融合しているロビーからすでに魅了されるはず。古民家を有効活用しているため、木の温かみ、木目の独特な表情がゲストを優しく包み込むようでもあります。

 そして、ロビーの上にある中2階へ。まるで秘密基地のようなラウンジ「小屋組み」は、かつて「おかいこさん」がいた母屋のメザニンだったそう。アルネ・ヤコブセンやハンス・J・ウェグナー、柳宗理といった国内外のデザイン家具が並ぶ「小屋組み」では、ウェルカムドリンクとケーキをいただくことができます。

 15時からはコーヒーやハーブティーに軽いスナック、19時以降ならバータイムとして日本酒や焼酎も無料で楽しめるので、お気に入りのチェアにゆったりと腰を掛け、釘を使わずに組まれた「ほぞ造り」をじっくり鑑賞するもよし。

 「里山十帖」のコンセプト「Redefine Luxury」とはラグジュアリーの再定義。それは空間全体をライフスタイルのショールームとして展開すること。料理や温泉だけでなく、ライフスタイル提案型複合施設として、宿泊棟にはライフスタイルショップも併設しています。ラウンジにあった家具や雑貨、寝具、アート…など、館内で出合う心地いいものは、ほとんどここで購入することができます。

 宿泊棟にはギャラリー「hito-bito」というイベントスペースもあります。イベントがないときにはラウンジとしても活用でき、19時から23時はバータイムに。シングルモルトウイスキーや日本酒などを無料でいただけるのが嬉しいところ。陳列されている画集や図鑑といった大型本のセレクトも秀逸で、静謐な時間を過ごすことができます。

2025.07.10(木)
文=大嶋律子
写真=鈴木七絵