ロレックスの理念を体現する、タフで情熱的な海のテスティモニーたち

 この最新型ヨットを走らせるのは、最大6名のクルーたち。前述のようにセール・グランプリは、どのチームも同じ機材と人数で戦うことが定められている。つまり高性能のヨットという条件はみな同じで、それを駆使して勝利をつかめるか否かはすべて、クルーたちの知識と技術、チームワークにかかっているのだ。ヨットの中枢である舵を担う操舵手(ドライバー)、ウィングの角度を調整するウィングトリマーと2人のグラインダー、フライトコントローラー、そして戦略を張り巡らせるタクティシャン。それぞれが役割を果たしながら、刻々と変わる風の方向や強さを正確にとらえ、スピードを保つための最良の判断を瞬時に下して、数あるコースマーク(ゲート)を抜けた先のフィニッシュラインへと突き進む。

 伝統あるヨット競技の世界で、革新的な技術の恩恵を受けながら常に高みをめざすクルーたちの姿は、精緻な機器を通じて伝統と卓越性を追い求めるロレックスの哲学と、深くシンクロする。ゆえにロレックスは彼らへの共感のもと、70年近くの長きにわたってヨットレースをサポートし、多くのセーラーたちを、その理念を体現するロレックス テスティモニーとして迎えてきた。オーストラリアチームの操舵手兼CEOであるトム・スリングスビーもそのひとり。優れた戦略と対応力で知られ、多岐にわたるカテゴリーで10度の世界選手権制覇を果たした彼は、セール・グランプリでオーストラリアを3度の優勝に導いた。今シーズンもオーストラリアチームはスペイン、ニュージーランド、イギリスなどトップ船団の中で接戦を繰り広げている。

 女性セーラーの活躍がめざましいことも、セール・グランプリの特徴のひとつだ。2016年と2020年のオリンピック金メダリストであり、2022年にロレックス テスティモニーとなったウェールズ出身のハナ・ミルズは、イギリスチームのタクティシャン。経験を生かした戦略でチームを引っ張るだけではなく、セーリングにおける環境保全や、女性セーラーの育成など、広い視点でヨット界に貢献している。

 さらに今シーズンは、セール・グランプリ初の女性操舵手(ドライバー)も誕生した。2024年にロレックス テスティモニーとして迎えられたのがブラジルチームのマルティネ・グラエルだ。2つのオリンピック金メダルを含む多くの功績をもつ彼女は、強い精神力でチームを引っ張るリーダー。シリーズ6戦目のニューヨーク大会では第4レースでトップを飾るなど、早くも頭角を現している。

2025.08.12(火)
文=新田草子
協力=ロレックス