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◆パイナップル・ココナッツ・マカダミア

 2皿目は、夏らしさ弾けるコク深い組み合わせ。器の底に隠れているのは、ココナッツのピュレに生クリームを合わせたなめらかなムースです。そして、沖縄県・石垣島産のボゴールパインはカルダモン、レモン、バニラを加えたシロップで軽いコンポートにして、角切りに。

 そのシロップを使ったジュレがまわりに添えられ、キラキラと輝きを放ちます。仕上げにローストしたマカデミアナッツのアイスクリームが載せられ、散りばめられたローストココナッツのメレンゲが、香りと食感のアクセントをプラス。

 「アイスクリームは、生クリームも卵も使って油脂分を高め、あえて分離気味にして口に入れたときに冷たすぎず、なめらかな口溶けになるよう仕上げました」と、青木さん。ナッツの香ばしさとコクにパイナップルが清涼感を加え、心地よいハーモニーをもたらします。

◆マンゴー・チーズ・小夏

 続くひと皿は、料理的な感覚で仕上げた塩味のクレープ。パルミジャーノチーズ入りのもちもちとした生地に包まれているのは、細切りにしたタイ産マンゴー「ナムドクマイ」と、高知産小夏を使った塩小夏のコンフィチュール&クリームチーズのクリームです。

 これをオーブンで温めて、小夏果汁とホワイトバルサミコ酢、オリーブオイルでマリネしたナムドクマイをのせ、小夏の果汁と塩に漬けた佐賀県産パプリカ、セルバチコをのせます。仕上げに、すりおろした6か月熟成のミモレットと黒コショウを。

 パクリとほお張ると、塩味と甘み、チーズの深みある香りとマンゴーや小夏のさわやかさが入り混じり、デザートのような料理か、はたまた料理のようなデザートかという絶妙の塩梅。セルバチコのピリッとした辛みとゴマを思わせる風味が加わって、オリエンタルな香りと味わいに包まれます。

 「以前、マンゴーとレタスのサラダを食べたことがあり、塩味のマンゴーもおいしいな、と思ってつくりました。チーズもマンゴーとよく合い、小夏やホワイトバルサミコ酢の酸味がアクセントになります。国産のマンゴーだと甘すぎてデザートっぽさが強くなるので、タイ産のナムドクマイを使いました」と、青木さん。

 合わせて提供される静岡県産朝露の新茶が、すっきりした後口をもたらします。

◆アメリカンチェリー・キウイ・バラ

 白いグラスに赤色が映えるパフェは、赤いフルーツとバラの組み合わせ。

 トップを彩るのは、アメリカンチェリーとブルガリアンローズのシャーベットと、バラの花びら、ノンアルコールのスパークリングロゼワイン、ルビーグレープフルーツ果汁を加えたシロップに漬けたアメリカンチェリーです。

 その鮮やかな色彩とコントラストを成す真っ白なブランマンジェからは、ピンクペッパーがふわりと香り、その下にはシロップ漬けのアメリカンチェリーと、そのシロップを使ったジュレが。底には角切りにした赤いキウイ「ルビーレッド」と、ハイビスカスを加えたシロップで炊き上げたルビーレッドのソースが隠れています。

 「パフェは、全体を混ぜて食べてほしい」と、青木さん。口に運べば、ふくよかな果実味と気品高いバラの香りに、ピンクペッパーのキリリとした辛みと華やかな香りが混じり合い、なんともエレガント。重なり合う香りの妙に、思わず目を閉じてうっとりしてしまいます。

2024.05.28(火)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵